多くのクレーンが並び、巨大な橋脚が造られている九頭竜川橋の建設現場

 新幹線と自動車道の併用橋としては全国初となる北陸新幹線の九頭竜川橋(全長414メートル)の建設工事が、福井市中藤新保町、上野本町の九頭竜川堤防で進んでいる。現場はアラレガコの生息地として国の天然記念物に指定されているほか、サクラマスが海と行き来し、アユの主要な産卵場もある。いずれも九頭竜川を代表する魚で、研究者は工事の影響がないか住民を交えて確認する態勢を求めている。


 九頭竜川橋は昨年10月に本体工事が始まり、2019年度末に完成する予定。両岸の堤防に橋台を造り、その間に六つの橋脚(長さ33・6メートル、厚さ4・5メートル)を配置する。橋脚二つが流れの中に建つ形になる。

 建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、天然記念物に指定されている点を重視。大規模河川工事で一般的な川の流れを変える「瀬替え」を行わない。このほか▽濁水の管理目標を設け、工法や設備で濁水の発生を抑える▽劣化しにくい土のうを使う▽浅場を掘り下げ、魚の通り道になる水路を造る—といった対策を取る考えだ。

 3月上旬に福井市森田公民館で開かれた「サクラマスサミット」で、鉄道・運輸機構福井鉄道建設所の西恭彦所長は「工事は長期間にわたり、その間に地形の条件が変わるなどいろいろあると思う。工事完了後に護岸や護床工などは現地の状況に応じて設置する」と説明した。

 これに対し、淡水魚の生態に詳しい福井県立大海洋生物資源学部の田原大輔准教授は、サクラマスが最も影響を受けるのではないかと考えている。体長60センチ前後と大きく、警戒心も強い。「工事の作業音や振動、照明を警戒し、現場を遡上(そじょう)せず下流側にたまる可能性がある」と指摘する。

 九頭竜川中部漁協によると、2月に釣りが解禁されて以降の釣果は工事現場の下流側が多い傾向という。笠羽忠恭事務局長は「過去の釣果と比較し、本当に遡上に問題が起きているか確認が必要だ。専門家の見解を踏まえ、必要があれば(鉄道・運輸機構に)遡上する時間帯に工事を控えるよう求めるなどの対応を考えたい」と話す。

 田原准教授は「まずは魚が移動する経路を確実に確保することが重要」と強調する。さらに、現場から濁った水が流れ出して土砂が川底にたまった場合、アユが産卵できなくなる恐れがあり、配慮すべきだと訴える。「工事の影響をさまざまな立場からモニタリングし、毎年検証する態勢が必要」と提言した。


 アラレガコ カジカ科の魚。北海道を除く日本全土に分布している。河口に近い汽水域へ移動して産卵する。1935年に生息地(大野市〜福井市)が国の天然記念物に指定された。県のレッドデータブックで県域絶滅危惧2類(絶滅の危険が増大している種)になっている。


 サクラマス サケ科の魚。琵琶湖のビワマス、南日本・西日本のサツキマスなどの亜種がある。九頭竜川はサクラマス釣りの聖地として人気が高い。海に下って回遊し大きいもので70センチ前後に成長、産卵時に川を遡上(そじょう)する。河川に居ついたもの(陸封型)はヤマメと呼ばれる。

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