机に置かれた千円札や500円玉が夕食代わりだった(写真はイメージ)

 18歳未満の6人に1人が貧困にあえぐ日本。「子どもの幸福度日本一」とされる福井県でも、失われかけている笑顔がすぐ近くにある。県内の現場から、子どもと親の姿を見つめる。

 机の上に500円玉や千円札が置いてあった。これで食事は何とかしてと、母親から無言のサイン。幼い弟と2人で児童相談所に駆け込み「ご飯を食べさせて」と頼んだ時もあったという。

 福井市内の中学教師(55)は、この生徒に不登校の理由を尋ねた。「弟の保育園の送り迎えをしないといけないから」。中学入学直前に両親が離婚した。兄弟を引き取った母親は給食費や教材代が払えず、滞納は約20万円に膨らんだ。生徒は卒業後に飲食店でアルバイトを始め、毎月数千円ずつ学校に持参して完済した。

 以前勤めていた小学校では、1週間同じ下着の児童がいた。学校でシャワーを浴びさせ、洗濯もした。冬はホットカーペットの上で寝ていて、あちこちに低温やけどの痕があった。

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 嶺北の高校に勤める教師(52)は、10年ほど前に担任した3年生の男子生徒をよく覚えている。父親が病気で倒れ、体に重いまひが残った。手助けしてくれる家族はいなかった。介護の手配、毎日の食事、洗濯、掃除…。全てが生徒1人にのしかかり、全く学校に来なくなった。

 通学にかかる300円ほどの電車賃がないという生徒がようやく登校した時、「返さなくてもいい」と言って数万円を渡した。将来をあきらめ、気持ちが卑屈になっていると感じた。少しでもお金があれば、心に余裕ができると思った。最初は拒んだが「就職したら必ず返します」と受け取り、就職活動のスーツやシャツをそろえた。

 県内の大手企業に勤めだした生徒が、2カ月ほどで辞めたと聞いたのは、翌年の就職活動時期だった。職場の人間関係でトラブルがあったという。「持っている能力は高い子どもだった。でも境遇が社会性を奪った」。卒業以来、生徒から連絡はない。どんな風に暮らしているのか、今でも気にかかっている。

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 厚生労働省がまとめた子どもの貧困率(平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の割合)は、2012年に過去最悪の16・3%となった。一方で、山形大の研究によると、18歳未満の子どもがいる世帯で収入が生活保護費以下の割合は、福井県が5・5%と全国で最も低い。

 「5・5%と聞けば、ほとんどの人は少ないと思うでしょうね」。福井市内で長く児童委員を務める50代女性は、ある子どもにバナナを差し入れた時に「本物だ」と喜んだ顔を思い出す。「福井で貧困は見えづらいかもしれないが、20人に1人、1クラスに必ず1、2人いる。この数字、本当に少ないですか」

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