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 ◎あわら・調査編

 福井のまちが面白くなるアイデアを県内9市の担当記者が膨らませる連載「空想まちづくり」。「提案編」「根拠編」で紹介した空想を仮に実現させるとしたら、どんな壁があって、どうすればクリアできるのか。「調査編」として考察する。

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■企業集積へ土壌優良

 テクノパーク構想の参考になる企業団地が岐阜県大垣市にある。「ソフトピアジャパン」。JR大垣駅近くの約13ヘクタールの土地にIT関連企業約150社が集積し、計2千人以上が勤めている。

 古くから工業の盛んな同市では約30年前、企業間で情報部門の連携を深める機運が高まった。1988年には県が一帯の整備計画「ソフトピア構想」を掲げ、96年に地上13階建ての拠点ビルと研究教育機関を開設。その後も企業が入居するビルを整備するなど約450億円を投資した。民間の動きに合わせて強力な主導力を発揮した。

 岐阜県情報産業室の担当者は「ハード整備だけでなく、人が人を呼ぶ仕組みづくりに注力した」と強調する。ソフトピアジャパンでは、セミナーや勉強会を年間40〜50回開き、若手技術者の育成や交流につなげている。企業集積による交流人口増を当て込んだ商業施設の整備や住宅地の開発が今も進んでいるそうだ。

 福井県あわら市の金津中部工業団地企業連絡協議会は2011年から、同団地の企業間の交流会を開催している。会員でパナソニック金津人事・総務課係長の永岡潤一さんは「あわらで企業集積は可能。異業種交流がもたらす技術開発の進展は企業が求めていること。優秀な研究者を引きこみ、連携をさらに進める仕組みづくりが重要」と話す。同社は県外大学と連携した技術開発を始めるという。

 企業誘致を進めるには団地造成が不可欠だ。あわら市企業誘致室の中辻雅浩室長は「(構想エリア内にある)菅野の水田約6ヘクタールを造成するとすれば10億円以上かかる。費用の問題はあるが、企業とのタイミングが合えば不可能ではない」。今年に入ってから同市への進出を検討する企業は複数あったという。

 企業の電力を全て自然エネルギーでまかなう構想は可能なのか。北潟にある風車10基の総発電力は2万キロワットで、安定稼働すれば1万世帯超の年間消費電力をカバーできる計算。市内のある企業では風車3基分程度の電力供給があれば、真夏の消費ピーク時も乗り切れるそうだ。ただ、風車はトラブルが相次いでおり、現在稼働しているのはゼロ。

 地熱発電は、国内の先進地に比べて源泉が80度ほどと低く、不向き。あわら市と坂井市では、旅館やホテルにボイラーを設ける木質バイオマスの「熱供給」が行われている。あわら三国木質バイオマスエネルギー事業協議会は熱供給に加え、電力も供給する中規模発電システムの導入を研究している。

 同協議会事務局の土田和希人(わきと)さんは「発電システム1基の発電力は20世帯分程度だが、大規模発電所に比べてエネルギー変換効率が良い。今は機械を輸入に頼るしかないが、国内産が出てくれば経費も安価になる」と話す。

 丘陵地では企業の太陽光発電建設が増加傾向にある。あわら市によると、少なくとも3カ所で千キロワット級の施設建設の計画が進められている。クリーンエネルギー先進地への機運はある。

■記者はこう見る 実現可能性30%未満

 あわらにはポテンシャルがある。「芦原温泉」のイメージが強いかもしれないが、優良企業がたくさんあり、「テクノパーク」の着想は自然な流れだった。企業集積やクリーンエネルギー推進への意識は行政や企業関係者にもあって、構想がさらに膨らんだ。行政には、時流を捉え、スピード感を持ち施策を展開してほしい。北陸新幹線の県内延伸が見えてきた。10年後、50年後を見据えたまちづくりを考えるときだ。

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 「あわら編 駅東をテクノパークに」概要

 あわら市のJR芦原温泉駅東部一帯を日本有数の企業が集まる「テクノパーク」にする。駅前には企業の技術・研究開発機関を集めたセンターを建て、大学のサテライトや起業支援、人材育成の施設も設ける。国内外の技術者や若手研究者が異業種交流を深め、先端技術を生み出す。企業の電力は太陽光や風力、木質バイオマス、地熱の自然エネルギー。芦原温泉の廃旅館は24時間利用できる温泉付きの企業宿舎にする。

 【意見募集】

 連載「空想まちづくり」の感想、ご意見を募集しています。連載は福井新聞ホームページからもご覧になれます。社会部=電話0776(57)5110、FAX0776(57)5145、メールはmachidukuri@fukuishimbun.co.jp

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