欧州の旅行業者や雑誌編集者らに福井県観光を売り込む安本幸博企画幹(左から3人目)=3月29日、福井県敦賀市の気比神宮

 急増する訪日外国人を福井にも呼び込もうと、福井県が日本航空(JAL)から観光営業部企画幹に人材を起用し、「広域誘客課」を新設してから約1年になる。2015年の宿泊者数の伸び率で全国上位につけるなど、徐々に効果が表れている。地道な市場調査を経た2年目は、「ZEN(禅)」を福井県統一ブランドに設定。洗練された日本文化が集積する県という強みを生かす構えだ。

 「幸か不幸か、福井は訪日外国人にとって目新しい地域。工夫次第で可能性はいくらでもある」。JALから昨年5月に県観光営業部に着任した安本幸博企画幹は、他県に後れを取っている外国人誘客を前向きに捉える。観光庁の統計によると、10〜14年の外国人宿泊者数は全国44〜46位。“未開の地”であることが、かえって目を引くとの見立てだ。

 広域誘客課ができたことで、海外向け営業を強化。海外旅行会社への営業は「現地で旅行関係イベントが開かれていない時期にも、行くようになった」(担当者)。公衆無線LANや免税店の整備、外国人接客用の指さし会話シート作製といった、受け入れ環境の向上にも努めた。

 15年に福井県で宿泊したのは5万9350人泊(人数に宿泊日数をかけた数)で、全国順位は43位。しかし伸び率でみると88・2%で全国8位となり、北陸新幹線開業に沸いた石川(47・4%増)、富山(42・1%増)両県を上回った。「知恵を絞れば、福井にも外国人を誘客できると確認できた」と安本企画幹は自信をみせる。

 本年度の誘客事業の鍵となるZENは、大本山永平寺を核とする福井県の禅宗文化にとどまらず、それに付随して外国人がイメージする日本文化そのものを象徴する言葉と位置付ける。信仰心の厚い県民が育んだもの全てを、ZENという言葉でひとくくりにして、本物の日本文化に興味がある外国人に売り込む。「とがった一点で勝負する、弱者の戦略」(安本企画幹)だ。

 今後は、ZENという言葉のイメージから、福井県の観光事業者がどこまで発想を広げられるかが課題となる。同課は月内に、ZENを売り込むためのキャッチフレーズを公表する予定。安本企画幹は「外国人が思うZENのイメージを日本人が想像するのは難しいかもしれない。しかし誘客の成功事例を一つずつ積み上げていくことで、県内に浸透させたい」と意気込んでいる。

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