「奇跡の一本松」の松ぼっくりから育てた苗木を世話する澤田半壽郎さん=10日、福井県鯖江市水落町4丁目

 5年前、東日本大震災の復興支援で岩手県陸前高田市を訪れた福井県鯖江市の澤田半壽郎(はんじゅうろう)さん(73)が、津波に耐えた「奇跡の一本松」の松ぼっくりから苗木を育て、陸前高田市に贈る。毎日欠かさず世話し育て上げた苗木を前に「被災地を元気づけることができれば」と話している。

 澤田さんは2011年7月、復興を支援するボランティアとして陸前高田市入り。一本松を見に行った際、趣味のクラフト工作の材料にしようと根元に落ちていた松ぼっくりを持ち帰った。

 紙袋に入れ自宅の冷蔵庫で保管し、翌年春、袋に種子が100粒ほどたまっているのを確認した。生命力の強さに心打たれた澤田さんは、自然体験を指導している鯖江いずみ保育園に種子を提供。命の尊さを伝えようと、園児や学童保育の児童とともにプランターに種をまいた。

 苗木にまで育てるのは苦労の連続だった。発芽したものの、水のやり方など管理方法が分からないと同園から相談され、澤田さんはプランターの苗木を引き取り自ら管理することに。所有する山際の休耕田に約50本を移植したが、水分を多く含む土壌はマツに合わず、管理を任されている同保育園の畑に植え替えた。

 「マツを育てた経験はなかったので、どうしていいか分からなかった」と澤田さん。畝を作ったり、冬場は屋根付きの囲いを手作りするなど試行錯誤を繰り返した。毎日畑を訪れ苗木を見守ったが、20本ほどは枯れてしまった。投げ出したい時もあったが、「被災地の風景を思い出すと見捨てることができなかった」。

 苗木は現在、約30本が高さ50センチほどまでに育った。今月に入って被災地の現状を伝える報道を見て、「自分にも何かできないか」と思案。9日、鯖江市に相談し、苗木を陸前高田市へ届ける協力を得られることになり、受け入れ時期などについて両市で協議を進めている。澤田さんは「マツが自分に助けを求めているような気がして育て続けた。寂しい気もするが、里帰りさせることになりうれしい」と目を細めていた。

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