チャリティーコンサートの練習で指揮棒を振る鵜沼さん=福井県鯖江市文化センター

 「年1回でいいから、震災や福島のことを考えてほしい」。東日本大震災と福島第1原発事故の被災地、福島県いわき市出身の福井大生が毎年、福井でチャリティーコンサートを主宰している。今年は震災から5年の節目で、自身にとっても今春に帰郷するため、大きな区切りの舞台となる。「いろんな人とつながり、輪が広がって活動が続けられた」と、福井の仲間への感謝の気持ちも込めて6日の本番に臨む。

 鵜沼(うぬま)紀夫さん(24)は、いわき市内の高校を卒業後、2010年春に福井大教育地域科学部に進学した。障害児教育を学び、中学で始めたサックスの腕前を磨こうと吹奏楽部に所属、充実した1年が過ぎようとしていた。11年3月11日、部活動中に未曽有の地震が古里を襲った。

 慌てて両親に電話したものの、つながらない。東北をのみ込む津波をテレビで眺めるしかなかった。その夜、夢を見た。「家族が僕を責めてきた。『何でおまえだけ助かったんだ』って」。翌日には家族全員の無事を確認でき、数日後には福井に自主避難してきた両親と3人の弟妹とも再会した。

 ひとまず安心はしたものの、やるせない気持ちが募っていった。福島はめちゃくちゃなのに、自分だけ福井で無事に暮らしている。古里のために何をしたらいいか考え「まずは募金を集めよう」とチャリティーコンサートの開催を決めた。「音楽なら考えを押し付けることはないし、敷居も高くない。多くの人に来てもらえるのではないか」。何より音楽に熱中してきた自分らしい活動でもある。13年1月、部活動の仲間ら3人によるささやかなコンサートを初めて開いた。

 知人からその知人へと活動が伝わって出演者も徐々に増えた。6日に鯖江市で開く4回目のコンサートは、約60人が出演する。「本当に感謝しかない」。過去3回で集まった善意やコンサートの収益金10万円以上を、日赤などを通じて被災地に寄付することもできた。

 今は「各地からの募金もたくさん集まったので、財政的な支援以上に、薄れてきている震災への関心を高めていきたい。福島を忘れないでほしい」と願う。コンサートでは指揮者としてタクトに思いを込める。

 今春以降のコンサート活動をどうするかは決まっていないが、理想は持っている。「福井の人に福島に来てもらったり、福島の人が福井へ行ったりできるといい」と両県の懸け橋になることだ。「福島出身の自分が、発信し続けることが大切だと思う」

6日、福井県鯖江で節目の慈善コンサート
支援ソング、シンポも

 鵜沼紀夫さんが主宰するチャリティーコンサートは6日午後6時から、福井県鯖江市文化センターで開かれる。「花は咲く」など被災地の復興を願う楽曲を演奏する。

 福島県出身でNHK交響楽団のバストロンボーン奏者として活躍する黒金寛行さんがゲスト出演する。鵜沼さんが震災への思いを語る場面もある。

 同会場では午後2時〜同5時、福井県内の避難者を支援する「ひとりじゃないよプロジェクト・福井」などでつくる実行委員会が、5年間の活動を振り返るシンポジウム「つながる ひろげる 2016」を開く。県内の支援団体が活動報告した上で、課題や支援の在り方についてグループごとに意見交換する。その後、全体のパネル討論を行う。

 いずれも入場無料。問い合わせはコンサートが鵜沼さん=電話090(5233)2585、シンポジウムは同プロジェクト・福井代表の内山秀樹・仁愛女子短大教授=電話090(5171)6410。

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