組み体操のリスクについて語る内田准教授=2月20日、福井市のアオッサ

 全国の小中高校の運動会などで負傷事故が相次いでいる組み体操をめぐって、福井県内でも安全対策の強化を図る動きが出ている。一部自治体では「ピラミッド」などの高層化を避ける注意を喚起した。一方で「組み体操で得られる達成感はほかの種目では代えがたい」など教育的意義を訴える声もある。

 組み体操は集団体操の一種で、四つんばいになって重なる「ピラミッド」や、立った人の肩の上に乗る「タワー」などがあり、運動会や体育祭の種目の一つ。

 ただ、日本スポーツ振興センター(東京)によると、組み体操(体操)が原因で医療機関を受診した小中高生が医療費を受給した件数は2011年度から4年連続で8千件を突破している。大阪市は今月、自治体として全国で初めて「ピラミッド」「タワー」を16年度から禁止することを決定。千葉県流山市の全市立小中学校は16年度から組み体操を全面廃止する。

 福井県教委による調査では、本年度に組み体操を行った学校は69校。小学校の約3割、中学校の約1割が実施。高校はゼロで、「他県の状況を詳しく把握していないが、組み体操が活発な地域ではない」(県スポーツ保健課)。組み体操に伴う県内小中学校の医療費受給件数は12年度10件(うち骨折1件)、13年度10件(同1件)、14年度18件(同3件)となっている。

 全国的に事故が多発していることを受け、県教委は今月16日、小中高校の体育教諭約120人が集まった会合で、自校の子どもの体力や集団の状況を考慮し、十分な安全対策を講じるよう注意を促した。大野市教委は昨年9月、小中学校の校長会に対し「ピラミッド5段、タワー3段まで」を守るよう指示。それ以上の高さで実施されていた学校があったわけではないが、他県の状況を踏まえ、安全確保の徹底を求めた。

 県内で組み体操が活発に行われている敦賀市。小学校は1校を除き実施しており、7段のピラミッドに取り組む学校もあるという。市教委は昨年4月、小中学校の校長会に対して「高さや難度を競うのでなく、演技構成などを工夫するように」と呼び掛けた。

 馳浩文部科学相は今月9日、組み体操の事故防止のための方針を本年度内に示す考えを明らかにした。県スポーツ保健課は「方針を受け、必要に応じ対応を考えたい」とする。組み体操を行っている学校が1割に満たないという福井市は、国や県の動きを見て対応していく考えだ。

 一方で、現場からは組み体操の効果を評価する声も聞かれる。大野市教委の担当者は「組み体操は、集団内での協力意識や、大きな目標に挑戦する態度を育む上でも一定の意義がある。ほかの演目では代えがたい」という。敦賀市内のある校長も「安全確保は当然で、国が指示するような話ではない。現場の判断に任せるべきだ」と話している。

 組み体操事故に詳しい名古屋大大学院の内田良准教授(40)=福井市出身=が同市内で講演し、「『一体感』や『感動』を優先して組み体操を巨大化させていくべきではない」と訴えた。

 内田准教授の専門は教育社会学。学校での柔道や組み体操事故について問題提起している。講演では「ピラミッドで『しんどくても支えろ』というのは日本的な美談で、現場は教育的意義があると言うが、『教育』という言葉が現実の危険を見えにくくしている」と指摘した。

 同准教授によると、小学校の体育活動(2012年度)では、跳び箱、バスケットボールに次いで、組み体操の事故が多い。頭や首、腰など体の中心部分の深刻なけがが多いのが特徴で、ピラミッドは3段まで、タワーは禁止すべきだとの考えだ。

 「『危険だからと言ってやめたら何もできない』と言われるが、リスクの程度に応じて優先順位を付けながら安全策を講じなければならない」と強調。ただ国や教委がトップダウンで一律に規制するのは望ましくないとし「子どもの命を預かる学校が自主的に動くことが大切」と述べた。

 講演は同市の県子どもNPOセンターが企画し、約40人が聴講した。

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