「フクイベナートル・パラドクサス」について笑顔で発表する東洋一特任教授=26日、福井県庁

 福井県立恐竜博物館(勝山市)が26日発表した小型獣脚類恐竜のマニラプトル形類の新属新種「フクイベナートル・パラドクサス」は、研究の当初、同形類の中でもより鳥類に近いドロマエオサウルス類と推定されていた。しかし化石のクリーニングが進むにつれ、原始的な特徴やドロマエオサウルス類にない特徴が次々と見つかった。同一個体に原始的、進化的な特徴を併せ持つ「非常に奇妙な恐竜」(東洋一・福井県立大特任教授)の姿が明らかになっていった。

 東特任教授ら研究チームが当初進めたのは、頭の骨や足の爪、足の甲の骨のクリーニング。ドロマエオサウルス類の骨と同じ形状を持つことが分かり、同類の新種の化石と推定された。鳥類に近い特徴である長い前肢を持つことも分かった。

 ところが大腿骨を調べたところ、ドロマエオサウルス類には見られない出っ張った形状を発見。この骨の特徴は、同類よりも原始的な種類と類似性があった。

 ドロマエオサウルス類などの肉食恐竜のような、肉をかみちぎるために縁がギザギザになった歯(鋸歯)を持たず、雑食性だと推定されることも判断材料の一つになった。植物や小動物を食べるのに適した長い首や、ほかの獣脚類にない二股に分かれた頸椎を持つことも分かった。3Dプリンターで脳のモデルをつくり分析したところ、内耳や三半規管の構造に特色があることも判明した。

 福井県庁で会見した東特任教授は、頸椎や大腿骨を調べ始めたころから、「ドロマエオサウルス類ではないかもしれない」と疑問を持ち始めたと振り返る。「さまざまな特徴を持つ極めて特異な個体で、世界中の獣脚類の研究に貢献する発見といえる」と、終始笑顔で説明。「今後、獣脚類の分類を見直すきっかけになる可能性もある」と興奮を隠しきれない様子だった。

 勝山市の同じ地層からは肉食恐竜フクイラプトルも見つかっている。雑食性、肉食性の恐竜が歩き回り、その餌となる多様な動植物も白亜紀前期に栄えていたことになる。昨年には昆虫化石も発見された。東特任教授は「大きな川や森がある、豊かな恐竜時代が福井にあったのだろう。今後の調査でも、今までにない生き物の化石が見つかる可能性は大きい」と期待を込めた。

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