福井県嶺北地方の地質断面図の一部

 福井県内公共施設の建設時のくい打ち工事で、業界最大手の三谷セキサン(本社福井市)の電流計データ流用が発覚して間もなく3カ月。くいが、固い地盤「支持層」に届いたかどうか確かめるデータの記録紙を現場担当者が紛失し、別のくいのデータを流用するなどしていた。地盤の事前調査などで安全性を推認できることがデータ軽視につながり、流用に至ったとみる建築関係者もいる。

 同社の流用は昨年11月下旬から相次いで判明し、県内では福井、越前、あわらの各市が発注した公共施設の工事計4件で分かった。うち3件が支持層に直接打ち込む「支持ぐい」で、横浜市内のマンションが傾いた問題で旭化成建材(本社東京)が施工したのと同じタイプだった。

 各市の説明によると、このタイプの施工時は一本一本のくいが支持層に届いたかを電流計で測定し、データの記録を行政に提出するという。しかし、今回の3件では各工事で23〜206本打設されたくいの一部について、現場担当者が紛失したり、紙詰まりでデータが取得できなかったりしたため、データが取得できた別のくいのデータを流用して提出していた。

 ただ、いずれの場合も、データのあるくいは支持層に到達し、設計時の地盤調査などで周辺の支持層が平たんであることが確認されている。各現場で使用したくいの長さが同一であるため、データがないくいも支持層に届いているとみて、三谷セキサンや行政は「安全性に問題はない」とする。

 横浜市の問題では、支持層の形状が複雑との指摘もあったが、地盤工学を専門とする福井大の小嶋啓介教授は、福井県内で問題があった嶺北地方の地盤について「福井平野の支持層は、比較的連続していて平たん」と話す。小嶋教授によると、同平野の地下には、支持層となる固い地層「洪積砂礫層(こうせきされきそう)」が広範囲にある。深さは地域によってばらつきが多少あるが、例えば福井大文京キャンパス(福井市文京3丁目)の一帯だと、約30メートル地下にこの層が位置するという。

 こうした特性を踏まえ小嶋教授は「建物の建設時には地盤や掘削土砂の性質をみて、総合的に安全性を確認すべきだ」と指摘。地盤調査などを元にした同社と行政の主張は妥当というわけだ。

 しかし、電流計データがなくても安全性が推認できることが、業者の油断につながるとの声もある。県内の公共施設工事などを請け負った経験を持つある設計士は「工事関係者は地盤調査やくいの長さをしっかりと確認する。だからデータの一部がなくても地盤が複雑でなければ大丈夫だろう、という話になってくる」と話す。

 ただ、この設計士は自らの経験を基に「くいを打設するときには一部は立ち会うが、あとは業者の責任施工。立ち会わなかったくいのデータをいちいち確認することはない」とも話す。福井市の担当者も発覚時の会見で「提出されたデータを見比べ、コピーされたかどうかまで調べていない」と説明。第三者のチェックが入りにくい状況も、流用を可能にした一因となっていたようだ。

 福井県は、今後の県発注工事について元請け業者に記録紙を現場で写真撮影するよう課すことを決めており、一部の市町も同様の対策を講じる考えだ。県の担当者は「(データ流用はないものと)業者を信頼してきたが、不正は当然あってはならないこと。再発防止に努める」と話した。

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