福井県あわら市のイノシシ捕獲地域の推移

 福井県あわら市で農作物のイノシシ被害が急増している。福井県農業共済組合によると、同市の昨年の水稲における獣害被害申告筆数(ほ場数)は、前年比でほぼ倍増した。市内のイノシシ捕獲区域も拡大する一途で、市はことし1月、巻き狩りなどの緊急対策を3月末まで重点的に実施すると発表した。暖冬の影響で死なずに冬を越す個体の増加も懸念されるため、迅速な対応が求められている。

 ▼被害申告数が倍増

 同組合のまとめによると、県内全体では昨年の水稲の獣害被害申告筆数は、2028(前年2447)で、前年比で約2割減少した。昨冬の積雪期間が長かったため被害の大半を占めるイノシシが冬を越せず、個体数が減ったからと分析している。実際、大野市は31(同166)、勝山市は82(同150)など、積雪量の多い地域は申告筆数が激減した。

 一方で、あわら市は前年の118から206とほぼ倍増した。県内17市町のうち、ほかに申告筆数が増えた福井市(前年比約20%増)や越前町(同約3%増)と比較しても突出している。

 ▼広がる生息区域

 あわら市のイノシシの捕獲数は、06年度は45頭だったのが14年度は3倍以上の162頭に上るなど年々増加している。

 15年度は市が害獣の焼却処分に対する支援制度を新設したこともあり、ことし1月5日時点で14年度を大きく上回る約280頭が捕獲された。地区別では、細呂木が前年度比約6倍の57頭、これまで実績のなかった吉崎でも14頭が捕獲された。

 生息区域も広がっている。市の捕獲数まとめによると、06年度は北陸自動車道の東側山間部に限定されていたが、山沿いに年々拡大。現在では、北潟湖東岸地域やJR芦原温泉駅周辺の市街地近くにまで及んでいる。

 狩猟歴15年の猟友会員、桶谷洋治さん(73)=吉崎=は「5年ほど前からイノシシが極端に増えており、市の支援なしでは捕獲などの害獣対策は進まない」と指摘する。

 ▼市の指導力に期待

 今季の記録的な暖冬により、春以降のさらなる被害拡大を危惧した市はことし1月、狩猟期間の3月31日まで、緊急対策を実施すると発表した。このような緊急策は初めてで、大規模な巻き狩りなど重点的な対策に乗り出した。

 1月30日には第1回が同市熊坂の森林で行われた。捕獲はできなかったが、区民ら約50人が参加し連携を確認した。2、3月も行うほか、16年度当初予算にも巻き狩りの予算を計上する予定だ。

 市は捕獲支援や狩猟免許取得に対する補助などを継続し、16年度は先進地視察にも取り組むなど力を入れる。川西範康・市経済産業部長は「16年度は被害や捕獲数がさらに増えることが考えられる。あらゆる策を講じていきたい」と話す。

 イノシシの被害区域は、県内有数の農産地である坂井北部丘陵地や市特産サツマイモの産地・富津区の目と鼻の先まで広がっている。被害拡大を最小限に食い止めるためには、地域と行政の連携強化が必須であり、市の指導力に期待したい。

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