福井県内の小中高校が法教育の取り組みを発表したシンポジウム=1月30日、福井県敦賀市福祉総合センター

 子どもたちが法やルールの基になる考え方を身に付ける法教育を広げようと、福井県法教育推進連絡協議会によるシンポジウム「未来の主権者を育てるために」がこのほど、敦賀市内であった。法教育のモデル校として活動してきた同市の小中学校などが実践報告した。県内外の教員ら約140人が参加。選挙権年齢の18歳引き下げを踏まえ、公正や正義について学ぶ学習の意義を確認した。

 「ジャンケンは公平?」—。敦賀市粟野小の千葉雅人教頭は「合理的な解決方法を考える基盤づくり」をテーマに、6年生で実践した社会科の授業を紹介した。題材に選んだのが、子どもたちが日常的に使うジャンケンだ。

 授業では「徹夜で勉強する兄の夜食を見た弟が、一食分しかないが『自分も欲しい』と言った」「卒業式のお別れの言葉の分担をどうする?」など、ジャンケンで決めにくい多様なケースで討論。形式的な「公平」でなく、能力や場面を考えて当事者全員が納得できる答えを導くことの大切さを学んだ。

 同市粟野中の山本拓(ひろし)教諭は1年生の道徳で取り組んだ授業を紹介。「ごみステーションにまとめて捨てられたエコキャップを持ち帰り、学校に持って行くことの是非」をテーマにした話し合いだ。

 「捨てられたものだからいい」「エコキャップ回収は世の中のためになるから許される」。生徒たちの意見の後、ゲスト講師の弁護士が、資源として分別されて置かれたごみは財物(財産)であることなどを説明し「持ち去るのは不適当」と法的な観点からコメント。生徒は様々な事例について、思いやりや道徳的な視点で解決するか、法に判断を委ねるか葛藤しながら活発に議論を交わした。山本教諭は「法教育の定着には法曹関係者の協力が不可欠」と訴えた。

 同市松陵中の奥田静巨(きよのり)教頭は、学級活動など「特別活動」での実践を報告。1年の全学級で「障害者駐車スペースが空いていれば健常者は駐車しても良いか」をディベート形式で考えた。

 授業後、生徒からは「障害者だけ優先されるのはおかしいと思っていたが、友達の意見を聞き、障害者を優先してこそ平等な社会になる」「駐車しても法律違反にはならないと先生から聞いたが、社会は法律だけでなく、思いやりの心で守られていると分かった」などの感想があった。

 奥田教頭は「正義感や公平さを重んじる心の大切さを理解してくれた」と話し、来年度以降は法教育を全学年の年間指導計画に位置付けて推進していきたいと力を込めた。

 このほか、武生高の相道孝志教諭が3年生の倫理で実施した「法と正義を考える授業」について報告した。

 県法教育推進連絡協議会の野坂佳生会長(弁護士、金沢大大学院法務研究科教授)は、従来の法教育は法律家が関わって授業案を作っていたとし、「今回、ほぼ現場の先生のみで授業を組み立てたことが意義深い。市全体で取り組んでいる例は全国でも少なく、モデルケースになり得る」と評価。その上で「『みんなで話し合って考えないといけない課題』に気づくことが主権者として大切な資質。そうした力を法教育で身に付けてほしい」と期待を示した。

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