ロボットを使った前立腺がんの腹腔鏡手術。左端の医師が右手にあるロボットを操作している(福井大医学部附属病院提供)

 男性のがんのうち、新たに診断される患者が最も多くなると予想されている前立腺がん。腹腔(ふくくう)鏡手術による前立腺全摘出で、手術を支援するロボット「ダビンチ」を福井大医学部附属病院(福井県永平寺町)が県内で初めて導入してから丸2年が経った。前立腺をより正確に摘出し、再発の可能性を減らせるほか、尿漏れの程度が軽くなるなど、患者の負担軽減にメリットが大きいという。

 前立腺がんの早期発見時の手術治療では、前立腺を全て摘出する。摘出には開腹手術と、下腹部に小さな穴を開けて内視鏡など手術器具を挿入して行う腹腔鏡手術がある。腹腔鏡手術は開腹手術に比べて出血量が少なく済み、骨盤の一番奥の狭い部分にある前立腺の取り残しを減らせるなどの利点がある。ただ、手術には高い技術が求められる。

 同病院は2013年12月に腹腔鏡手術の支援ロボットを導入した。泌尿器科の伊藤秀明准教授は前立腺がんの手術治療は「正確に摘出できるかが非常に大事」とする。ロボットを使うと、カメラによって3次元の映像が映し出され、細かい動きも可能になる。

 前立腺を摘出した後、膀胱(ぼうこう)と尿道を縫いつなぐのは難易度が高いが、ロボットを使うと複雑な操作が可能になるため、丁寧に正確にできるという。

 またロボット支援での細かい操作によって、前立腺のすぐ下にあって尿漏れを防ぐ筋肉「尿道括約筋(かつやくきん)」の損傷を少なくできる。これは尿漏れの頻度を減らし、回復期間の短縮につながる。前立腺摘出時には、そばにある勃起神経も通常は一緒に取ってしまうが、温存する場合は正確なロボット操作が有効になる。

 ロボット支援手術で摘出した組織の検査で、断面にがん細胞が検出される「断端(だんたん)陽性」が減ったとするデータもある。

 同病院でのロボット支援手術は昨年末までの2年間で86事例行われた。開腹手術に比べて手術時間は短く、輸血はほぼ不要。術後の痛みも軽減され、入院期間は平均術後10日間で、5日ほど短くなっている。

 現在は早期の患者のみ対象にしているが、転移までには至らない「局所進行」への対象拡大が検討課題という。このほか、失禁軽減、勃起神経温存の点でも、伊藤准教授は「手術の質を上げていきたい」としている。

 支援ロボットは、県内では福井赤十字病院(福井市)も昨秋導入し、2月に運用開始予定。

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