「日本海の沿岸域は、水温や流れ方の変化の影響を直接受けやすい」と話す兼田准教授=福井県小浜市の福井県立大小浜キャンパス

 「自然は変化するのが本来の姿」と研究者は言う。福井県沿岸でも水温が上昇し、捕れる魚種も変わってきている。観測技術の進歩で、豊かな里海の様子をさまざまなデータから見られるようになってきた。「科学の目」を通して、研究者と漁業者に新たなつながりも生まれている。

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 気象庁の資料によると、福井県沿岸を含む日本海南西部の海面水温は2014年までの100年間に1・27度上がった。新潟県から東北にかけての日本海中部の上昇幅は1・72度で、ともに世界全体の平均(0・51度)を大幅に上回っている。海面水温が上がると、海面付近の水と深海の水が混ざりにくくなり、栄養分が行き渡らず、魚の餌になるプランクトンが減るとの研究もある。

 福井県内で捕れる魚も変わってきている。福井県水産試験場の統計では、イワシ類やサバ類、アジ類などの漁獲量が落ち込む一方で、暖かい海域に生息するサワラが近年急激に増えている。

 サワラは1998年まで多い年でも50トン規模だったが、99年に268トン、00年には801トンまで伸び、13、14年は2千トン前後に上った。水温の上昇が分布や回遊経路に影響したと考えられており、もともとは九州沿岸や瀬戸内海で捕れていた魚が、今では福井県内の主要な資源となっている。

 福井県沿岸の海水面温度の上昇のはっきりとした原因は分かっていないが、福井県立大海洋生物資源学部の兼田淳史准教授(44)=沿岸海洋学=は「日本海の沿岸域は対馬海流に面しており、水温や流れ方の変化の影響を直接受けやすい」と説明する。太平洋赤道域の海面水温が南米ペルー沖で高まるエルニーニョ現象や、逆に水温が下がるラニーニャ現象を含め、地球規模の環境変化の一端が、身近に表れているという。

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 海の環境は数十年周期で変わるとされ、アジやイワシといった魚が自然に増えたり減ったりする「魚種交替」もみられる。回遊魚の生息範囲は、最近になってタグやセンサーを付けるなどして少しずつ観察できるようになった段階。長期的に生息範囲がどう変わってきたかのデータは、まだ十分ではない。

 漁業者を悩ませていた大型クラゲも、現在はほとんど姿を現さなくなった。兼田准教授は「大量発生は地球温暖化など環境変化の象徴のようにいわれていたが、温暖化の傾向は変わっていないのに激減した。数十年前にも大発生していた記録があり、周期的に起こる可能性もある」と指摘する。

 人工衛星のほか、定置網や漁場近くのブイ、底引き網漁船の観測機器などで、海流や水温などのデータが得られるようになった。これらを蓄積し、漁獲量などと照らし合わせていけば将来的に、魚が捕れる場所が予想できる可能性もあるという。

 研究者と漁業者が海の状況を話し合う機会も増えている。「漁業者が肌で感じた変化をデータから解析できるようにもなってきた。新しいコミュニケーションが始まっている」。兼田准教授が力を込めた。

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