「小中学校の高い学力を高校で十分に生かしきれていない」—。福井県が昨年末まとめた教育振興基本計画の一文だ。いかに高校の学力向上を図り、新しい大学入試に対応するか。ヒントを探ろうと、東京大や京都大など難関大合格で実績を挙げる県外の進学校を訪ねた。

 京都市立堀川高。昨年11月、同校の教育研究大会には全国から約400人の関係者が訪れ、熱気に包まれていた。1999年、課題研究型の学習に取り組む「探究科」を開設。探究科1期生が卒業した2002年、国公立大の現役合格者が前年の6人から106人に増え「堀川の奇跡」と脚光を浴びた。近年は50〜60人が東大、京大に進み「その秘密を知りたい」と全国から視察が絶えない。

 同大会では1、2年の計29の授業を公開。2年人間探究科の「現代文研究Ⅰ」をのぞくと、5〜6人のグループごとに夏目漱石の「こころ」の一節を解釈し、発表する授業が行われていた。「主人公もKという人物もエゴイスティックな面を持っていた」「前近代にエゴイスティックという言葉はなくても『何かをしたい』という欲求はあった」。発表に対して厳しい意見や容赦ない批判が矢継ぎ早に飛ぶ。

 「進学校と言えば先生が主導し、生徒は声を立てず勉強に取り組むイメージだろうが、うちはワイワイガヤガヤ。視察に来られた方が一番驚く点」と恩田徹校長(58)。教員が話している間も質問していいルールで、授業の遅れも気にしない。

 同校の看板が「探究基礎」(週2時間)と呼ぶ独自科目だ。「学校案内」では「世の中で知られていないことを発見したり、これまでになかったモノを作り出したりする上で必要な探究力を身に付ける」とある。ゼミや論文作成を通し、自らの主張を論理的にまとめる力や情報を批判的に読み解く力を育てることに主眼を置く。

 1年前期は、論理の組み立て方や文献の探し方など研究の基礎を徹底的に学び、課題に応じて論文を書く。本年度は「国内空港のうち、ハブ空港化するならどこが最適か」。浅野望さん(1年)は「心境をストレートに書く作文と違って難しいが、分かりやすく論述する力が磨かれた」と話す。1年後期は「物理」「数学」など9ゼミに分かれ、課題を設定し、実験や先行研究の調査を重ねる。教員が「教える」場面もあるが、生徒同士で意見を出し合うのが特徴だ。

 2年前期は集大成として、各自がテーマを決め、研究を行い、論文にまとめる。山口夏穂里さん(2年)はネット世界の広さについて考察。「ウィキペディア」の2ページを無作為に抽出し、一方から一方まで、どのくらいのページを移動すれば、たどり着くかをグラフ理論の知識を用いて研究した。「結論が出たと思ったら新たな課題が出て、探究は一筋縄ではないが、仲間の助言ももらいながら、どう解決しようか考えるのが楽しかった」と振り返った。

 正解のない問いに挑む「探究」は、「知識量」が問われる受験に直接関係ないように思えるが、恩田校長は「学習習慣が変わる」と強調する。「難関大の偏差値65の壁を突破しようと思えば、最低3時間の家庭学習が必要。ただ、嫌々しても効率的じゃない」。探究で自問自答型の学習スタイルを身に付けた生徒は長時間の学習にも意欲的に取り組むという。同校長は「探究と教科学習は車の両輪」と力を込めた。

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