太ももの付け根から血管を通してカテーテルを挿入する場合のイメージ(エドワーズライフサイエンス提供)

ハイブリッド手術室で「経カテーテル的大動脈弁治療」を行う医師ら=13日、福井市の福井循環器病院

 福井市の福井循環器病院は、心臓の大動脈弁が硬くなり開きにくくなる「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」の最新の手術法「経カテーテル的大動脈弁治療(TAVI)」を県内で初めて実施し、成功した。カテーテル(細い管状の医療器具)を使って心臓に人工弁を運び留置する手術で、開胸手術に比べ切開する範囲が小さく、手術にかかる時間や術後の入院期間を短くすることが可能。体への負担が少ないことから、高齢のため体力が低下している人など、従来の手術が受けられなかった患者の治療にも期待が持たれている。

 同狭窄症は心臓弁膜症の一つ。重度の場合、人工弁に取り換える必要があるが、胸を大きく切開し、心臓を止める開胸手術は高齢で体力が低下していたり、他の疾患を抱えていたりする人には負担が大きい。手術が必要な患者の3〜5割は手術をあきらめていたという。

 TAVIは重度患者への新しい治療法で、折り畳んだ人工弁を装着したカテーテルを太ももの付け根から血管を通して挿入するか、肋骨(ろっこつ)の間を切開し心臓の先端から挿入して、取り付ける。開胸せず、心臓を止めずに手術ができ、体への負担が少ない。

 同病院での開胸手術の時間は4時間程度だったが、TAVIは2時間ほどで終えることが可能。術後の入院期間もこれまで3〜4週間必要だったが、TAVIでは1週間〜10日ほどでの退院が見込まれるという。

 同病院はエックス線透視装置を備えた清潔度の高い手術室「ハイブリッド手術室」を整備するなどし、昨年8月、「経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会」から県内で初めてTAVI実施施設の認定を受けた。北陸では富山大附属病院に次いで2番目。昨年末に1例目を行い、13日には2例目を実施した。

 1例目の手術を受けた坂井市の高橋泰雄さん(75)は昨年、同狭窄症が急速に進行。以前心臓のバイパス手術を受けていて、従来の手術法では血管を損傷するリスクが高かったため、TAVIでの治療を実施した。手術は2時間弱で終了。カテーテルを挿入する胸部の切開も8センチほどで済んだ。手術の翌日には食事をし、歩くこともできた。高橋さんは「手術時間が短く、術後の回復も早かった」と笑顔で話し、手術の12日後に退院した。

 同病院の門田治・心臓血管外科部長は「最先端の治療が福井でも受けられるようになった。年齢や体力、合併症などの理由で従来の手術ができなかった多くの患者を助けられるようになった」と話す。同病院は今後も開胸手術と両方を実施していくが、大橋博和院長は、TAVIを心臓弁膜症の治療体系を一変する治療手段とし「5〜10年後には心臓弁膜症のほとんどの治療に生かせるようになるのではないか」と期待を込めた。

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