三味線を調律する伊與さん

 福井市中央3丁目の「伊与和楽器店」3代目、伊與智基さん(45)は、福井県内外の三味線のプロ奏者から調律や修理の腕を買われた職人だ。仕事ぶりは口コミで広がり、NHK連続テレビ小説「あさが来た」で使われる三味線の調律も担った。伊與さんは「人に評価されるようになった。今後もいい音を生み出していきたい」と意欲をみせている。

 高校卒業後、東京にある三味線の製造業者で修業を始め、皮張りや棹(さお)の調整をはじめ、琴の調律などを学んだ。20歳で福井に帰った後も定期的に東京の職人の元を回り腕を磨いてきた。北陸邦楽器商工業組合(事務局石川県)によると、福井県内の三味線職人は伊與さんだけという。

 伊與さんは音の通りを良くする胴皮の皮の張り方や、全体のそりを0・3ミリ以内に抑える棹の仕上げ具合など細やかな調整で質の高い音を追求。「弾き手の気持ちも分からないといけない」と10年ほど前に演奏を覚え、自ら弾いて仕上がりを確かめている。

 県内の顧客が仕事ぶりを東京の三味線講師に紹介したのがきっかけで、5年ほど前から仕事が増え始めた。丁寧な仕上がりが評判を呼び、口コミで広がっていった。歌舞伎座(東京)や京都南座などで活躍するプロ奏者からの依頼も増えている。伊與さんは「自分が納得した音を、演奏者が喜んでくれることが一番」と話す。

 「あさが来た」の出演者に三味線などの演奏を指導する上方唄松浪流家元の松浪千壽(せんじゅ)さん(大阪市)からの依頼を受け、主人公の夫新次郎を演じる玉木宏さんが使う三味線の調律を担った。松浪さんは「楽器の管理の腕がいい。日本一といってもいい」と太鼓判を押す。

 伊與さんは「自分が作った音がドラマに出るのはうれしい。やってきたことは間違っていなかったと自信になった」と話し、仕事にまい進することを誓っていた。

関連記事
あわせて読みたい