OBバルーンによる止血のイメージ

 胎盤が子宮口にかかっている前置胎盤や、子宮の低い位置にある低置胎盤の妊婦の帝王切開出産で、出血を止めるための器具を、福井県立病院産科・婦人科の田中政彰主任医長らが開発し、臨床試験を行っている。二つのバルーン(風船)で子宮頸部を挟み込んで子宮の下部を強く圧迫し、止血する。大量出血による子宮摘出や母体の命のリスクを減らすことを目的にしている。

 前置胎盤は出産1000例で2〜5例起こるとされ、福井県立病院でも年間10〜15例あるという。出産は帝王切開で行う。低置胎盤は子宮口と胎盤の縁が2センチ以内と近い状態にあり、出産時の大量出血の頻度が高いことから、学会のガイドラインでは帝王切開が勧められている。

 胎盤が子宮上部の正常な位置にある場合は、胎盤がはがれた後、子宮の収縮で止血が進む。しかし胎盤が低い位置にあると、子宮下部は収縮力が弱いため、出血が持続することが多い。

 大量出血による子宮摘出を回避するため▽子宮収縮薬の使用▽子宮の部分的もしくは全体の縫合▽子宮動脈の結さくや塞栓▽一つのバルーンによる圧迫—の方法が取られている。そのうちバルーンによる止血は2013年春から医療保険適用となり成功率が高いが、もともと前置・低置胎盤の止血器具として作られたものではなく、田中主任医長、白藤文副医長らが、前置・低置胎盤の帝王切開に特化した新たな器具を医療機器メーカーと協力して作成した。

 「OBバルーン」は、バルーンを二つにすることで、前置・低置胎盤で特徴的な子宮下部の出血を効率よく止めるようにした。14年12月に同病院の倫理委員会の承認を受け、臨床試験を行っている。

 これまでに7例実施。OBバルーンは子宮内に6〜12時間入れておくが、バルーンを追加で膨らますことができる管を設けるなど改良も加えた。今後、福井県内や石川県内の病院でも臨床試験を行う計画を進めている。

 前置・低置胎盤の帝王切開は、通常の帝王切開より手術中の出血が多いといい、田中主任医長は「出血量を減らすことで輸血や子宮摘出を避けられるし、母体へのリスクは大幅に減らせる」とする。

関連記事
あわせて読みたい