水槽で展示されている養殖のアラレガコ=福井県永平寺町の九頭竜川流域防災センター

 かつては福井県の九頭竜川を象徴する魚だったが近年急激に数が減っているアラレガコについて、福井県立大と若狭高による試験養殖で安定供給にめどが付いた。約1年間で出荷できるサイズに成長し、養殖中の生残率も9割を超える。県立大の研究者は「今後は販路や消費の拡大にも取り組み、まずは食文化を復活させてアラレガコの保護に対する関心を高めたい」と意気込んでいる。

 九頭竜川のアラレガコは、1950年代に11月から1月にかけての1シーズンに7千匹を超える漁獲量があった。ダムや堰(せき)の建設、河川改修などの影響で生息に適した環境が減り、数年前から漁が途絶えた。県のレッドデータブックで県域絶滅危惧2類(絶滅の危険が増大している種)になっている。

 県が2005年度まで養殖の研究を続け、以降も民間で量産化が探られた。他県でも研究されたものの、実現に至っていなかった。県立大海洋生物資源学部と若狭高海洋科学科(当時小浜水産高)は、12年度から高大連携による共同研究を始めた。

 12、13年度は地下水の掛け流しによる養殖に成功したものの、約9カ月間の飼育で生残率は40%、平均体重19グラムにとどまった。14年度から若狭高海洋キャンパス(小浜市)にある閉鎖式循環システム(飼育水を浄化しながら循環利用する養殖装置)を活用し、海水を3分の1入れた汽水による養殖に切り替えた。この結果、生残率は97%に上り、同じ期間で平均体重72グラムまで成長した。

 同学部の田原大輔准教授は「地下水の水温は年間を通じて16度前後で、アラレガコにとってはやや低かった。閉鎖式循環システムは水温が調整でき、病気が広がる危険性も低い」と説明した上で、「他の魚の養殖でも生残率は良くて50%程度で、予想を超える成果」と驚く。現在は養殖した親魚から卵を採り、稚魚を育てる流れができている。

 さらに、日照時間が短くなるのに合わせて体内で産卵の準備を始めることを確かめ、夜間の照明によって卵の有無や成長の度合いを調整できるようになったという。

 養殖したアラレガコは永平寺町の料理店に出荷しているほか、10月から同町にある九頭竜川流域防災センターの専用水槽で展示が始まった。

 田原准教授は「九頭竜川にいるアラレガコの保護が最終的な目標。生息環境や資源量の調査を続け、構造物にある魚道の改善などを地道に訴えていきたい」と強調した。

 ■アラレガコ

 カジカ科の魚で北海道を除く日本全土に分布する。福井県外ではカマキリ、アユカケ、ガクブツなどと呼ばれ、アラレガコは福井だけの地方名。九頭竜川流域では伝統漁法や独特の食文化が発達し、1935年に生息地(大野市〜福井市)が国の天然記念物に指定された。

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