越前がにの種類や特徴について学ぶこども記者=福井県越前町大樟の越前漁港

大きな甲羅のズワイガニを持つこども記者=福井県越前町厨の道の駅「越前」

 日本海の冬の味覚と言えば越前(えちぜん)がに。今回の福井新聞「こども記者」活動は、福井県内で最もカニ漁が盛(さか)んな越前町を訪(おとず)れ、漁港での競りや一大イベントの「かにまつり」を取材。越前がにのおいしさの秘密(ひみつ)や、貴重な資源を守るための取り組みを学んだ。

 「サンマル(3千円)!」「ゴマル(5千円)!」。最初に取材に訪れた越前漁港(同町大樟(おこのぎ))では競(せ)りの真っ最中。仲買人(なかがいにん)らの威勢(いせい)のよい掛(か)け声が響(ひび)きわたっていた。

 地面の上には、水揚(みずあ)げされたばかりで生きた状態のカニがずらり並(なら)べられていた。案内してくれた越前町漁業協同組合の南直樹さん(51)は「今の時期は雄(おす)のズワイガニ、雌(めす)のセイコガニ、ズワイより少し小ぶりな山ガニの3種類を扱(あつか)っています」と説明してくれた。

 ズワイガニ漁は11月6日から3月20日まで。海が荒れて出漁できず、競りがない日も多い。それだけに漁港にカニが並ぶと、活気に包まれる。

 カニの脚(あし)に付けられた黄色のタグは越前がにの印。こうした産地証明のタグは今では全国で導入されているが、南さんは「他県や海外から輸入されたカニと区別するため、1997年に越前町漁協が全国に先駆(さきが)けて導入したんだよ」と教えてくれた。

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 記者たちは、道の駅「越前」(同町厨(くりや))に移動し、大勢の人でごった返すイベント「越前かにまつり」を取材した。

 「道の駅 越前うおいち」の店頭では、今季から売り出された最高級ブランド「極(きわみ)」と“対面”。「極」は重さ1・3キロ以上、甲羅幅(こうらはば)14・5センチ以上などの基準をクリアした特別に大きいズワイガニで、1匹8万円で売り出されていた。支配人の村田益廣(ますひろ)さん(67)が、水槽から取り出して間近で見せてくれると、記者たちは自分の顔ほどもある甲羅の大きさに圧倒(あっとう)されていた。

 会場を歩いていると、越前がにを販売(はんばい)していた「かねとも水産」(同町厨)の中橋英機さん(71)に、「ズワイガニの食べ方を知ってるか?」と呼(よ)び止められた。中橋さんの手ほどきで脚のつめを使って身を取り出した記者たち。甲羅に盛(も)りつけた身とみそを口いっぱいにほおばると、「おいしい!」を連発した。

 なぜ越前がにはおいしいのだろう? 越前町漁協の小林利幸副組合長(63)は、「越前がにが生息している水深200メートルを超(こ)える漁場まで越前漁港から十数キロと近いため、鮮度(せんど)の良いカニを港に持ち帰ることができるため」と説明してくれた。さらに、漁場の地形が段々畑(だんだんばたけ)のようになっていて、カニにとってすみやすい場所であることも、おいしいカニが育つ要因だそうだ。

 小林副組合長が「越前町は全国どこにも負けないカニの本場」と胸(むね)を張ると、記者たちは深くうなずき、福井の宝(たから)に誇(ほこ)らしげだった。

■捕りすぎ防ぎ 海の環境改善

 福井県内のズワイガニ漁獲量(ぎょかくりょう)は1960年代には800〜1千トン台だったが、捕(と)りすぎの影響(えいきょう)で70年代後半には210トンまで減少した。

 こども記者の薮野密(やぶのひそか)さん(福井大附属(ふぞく)小4年)は「貴重(きちょう)な越前がにを守るためにどんなことをしていますか」と質問。カニの種類ごとに漁期を決めたり、カニの“家”になるコンクリート製の保護礁(ほごしょう)を海に沈(しず)め、その周辺は漁を禁止にしたりしている。

 また、ズワイガニ漁期以外では、底引き網(あみ)の一部に穴(あな)を開けてカニだけをすり抜(ぬ)けさせる「越前網」と呼ばれる独自の取り組みなどが功を奏(そう)した。漁獲量は増え、近年は400〜600トンで推移(すいい)している。

 全国のズワイガニの中でも最高品質のブランドとして知られる越前がに。越前地方での漁は日本で最も古く江戸時からすでに行われていたという。皇室(こうしつ)に献上(けんじょう)しているのは越前がにだけだ。

 越前町漁協の小林副組合長は「漁師が力を合わせ、海の環境(かんきょう)を改善(かいぜん)するため、山に植樹(しょくじゅ)して緑を増やすなど地道な取り組みも続けてきた。カニを食べるときは、一生懸命(いっしょうけんめい)守ってきた海の資源(しげん)ということを忘(わす)れないでほしい」と話してくれた。

■敦賀市粟野(あわの)小6年 上野正義(うえの まさよし)記者

 最も印象に残ったのは「極」を見たことです。競りでカニを見ましたが、「極」は比べものにならないほど大きかったです。甲羅(こうら)だけで14、15センチ以上あり、ものすごく激(はげ)しく動いて、水槽(すいそう)から逃(に)げ出しそうでした。甲羅は硬(かた)く、はさみも大きく、ずっしり重くて身が詰(つ)まっていそうでした。取材で学んだことを生かし、カニを上手に食べたいです。

■福井大附属(ふぞく)小5年 金原成秀(かねはら のりひで)記者

 福井県の海が、漁場的に良い環境(かんきょう)がそろっていることにおどろきました。それから、越前がにのおいしい理由が、港からカニの漁場までの距離(きょり)が近く、港に着くまでにあまり鮮度(せんど)が落ちないからということも分かりました。たくさん越前がにが捕(と)れるのは、特別な技を使っているのでなく、漁業の環境が良いからということを学びました。

■坂井市加戸(かど)小6年 山口里真(やまぐち りま)記者

 私はカニが大好きだけれど、詳(くわ)しいことは知りませんでした。競りに行くと、たくさんのカニが置いてあって、ズワイガニとセイコガニには黒いツブが付いていました。黒いツブはカニビルの卵(たまご)で、多いほど脱皮(だっぴ)から時間がたっていて、身が詰(つ)まっているそうです。これからは取材したことを生かしてカニを選んだり、食べたりしたいです。

■福井大附属(ふぞく)小4年 薮野密(やぶの ひそか)記者

 私はズワイガニを守る工夫がすごいと思いました。カニを捕(と)る時期が決まっているそうです。競りの様子は活気があり、値段(ねだん)が上がっていくのがわくわくしました。まつりで食べたカニはとてもおいしかったです。船には漁をするための大きな網(あみ)が置いてありました。ブランドのカニを守るために私たちが知らない苦労があることを知りました。

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