芦原温泉旅館宿泊者数の推移

 北陸新幹線金沢開業から7カ月が経過した。福井県あわら市の芦原温泉では、宿泊者数がほぼ毎月、前年比を上回るなど新幹線効果が顕著に表れた。しかし大型キャンペーンなどが終了する来年度以降は、北海道新幹線開業もあり宿泊者数の反動減が予想される。他の地域に宿泊客を奪われるか、新幹線効果を持続させられるか。「芦原温泉」の名を浸透させるための効果的な施策の実施が急がれる。

■うれしい悲鳴

 「クリーニング機械の稼働率は前年比120%。人手が足りず8月は臨時職員を雇った」。芦原温泉旅館の6旅館以上と取引がある老舗の川上クリーニング(あわら市二面)は、うれしい悲鳴を上げる。店主の川上京子さんは「昨年までは土日が忙しかったが、今年は平日も同様で、従業員を休ませるのもひと苦労。こんなことは今までなかった」という。

 芦原温泉旅館協同組合によると、金沢開業から8月までの芦原温泉(加盟14旅館)の宿泊者数は、5月の前年比138・3%、5万1842人をはじめ、4〜7月で前年を上回った。伊藤和幸理事長は「関東からの観光客が明らかに増加した。開業前後に多くのマスコミで報道された影響か、関西・中京方面からも増えている。想像以上の効果」と話す。

■特需的要素

 しかし、新幹線効果がいつまで続くかは不透明だ。北陸3県がJR各社と合同で展開している大型観光キャンペーンは年内で終了。本年度末には北海道新幹線新青森・新函館北斗間の開業が予定されている。

 芦原温泉では、九州新幹線の鹿児島県や東北新幹線の青森県のように、開業翌年の宿泊者数の反動減を危惧する声がある。

 あわら市観光協会の前田健二会長は「今年は、金沢からあふれた観光客が、芦原を含む周辺温泉地に宿泊した特需的要素が強い。芦原温泉宿泊者の約6割を占める関西・中京圏の観光客は、北陸新幹線で新潟や長野へ行きやすくなり減る恐れもある」と危機感を募らせる。「来年は、北陸が注目されているうちに芦原温泉を選んでもらえるようPRを強化しなければならない大事な年。今まで通り関西中京へのPRも注力すべき」とする。

■魅力を発信

 金沢開業による経済波及効果などを調査する日本政策投資銀行北陸支店企画調査課の新井洋司課長は、反動減への対応として「外国人客の受け入れ対策が重要。取り組み次第で明暗が分かれる」と指摘する。

 日本政府観光局の統計によると、全国の訪日外国人客数は2011年以降右肩上がりで、14年は約1341万人に上った。一方、14年の芦原温泉の外国人宿泊者数は6500人(市観光白書)となっている。

 日本航空から本年度、県の観光営業部に着任した安本幸博企画幹は「今ある観光素材が、どこの国の、どの年齢層の、どんな価値観を持った人に受け入れられるか分析が必要」と強調する。「まず外国人に芦原温泉を知ってもらわなければ。他の温泉地とは違う魅力を見つけ、効果的に発信していくことが重要」とする。

 北陸に温泉地は多々あり、ブームが去った後は地域間競争がさらに激化することが予想される。“新幹線バブル″を一過性にしないために、あわら市はターゲットやエリアを絞った広報活動など効果的な誘客策の立案、実施がこれまで以上に求められる。

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