「体が動く限り作り続けたい」と話す高村利幸さん=福井県越前市池ノ上町の高村刃物製作所

 厚生労働省は8日、本年度の「現代の名工」を発表した。福井県からは刃物製造工の高村利幸さん(79)=越前市=が選ばれた。ステンレススチール製刃物の製造に関する功績などが認められた。県内の現代の名工は、これで58人になった。

 分厚いグローブのような手が、刃物と向き合った年月を物語っている。戦後に父が立ち上げた高村鍛造所(現高村刃物製作所)で働き始めたのは16歳の時。農業用刃物が主力商品だった1950年代中ごろ、さびにくいステンレス包丁にいち早く着目した。

 しかし当時、ステンレスといえば「切れない刃物の代名詞」(高村さん)。いい包丁を作りたいという一心で、材料の研究に取り組み、さまざまな焼き入れの方法を試した。毎晩遅くまで研ぎや磨きの作業に没頭した。

 努力や研究のかいあって、60年代半ばには品質が大きく向上。越前打刃物の名声を高めた。また、試行錯誤を続ける中で、刃物をたたいてできた凸凹の鎚目(つちめ)があると、切った物がくっつきにくくなることが分かった。後に高い評価を受ける、鎚目を出した包丁の出発点となった。

 鍛造、研ぎ、仕上げといった全ての工程に秀でた存在。機械化もいち早く進めた。今や同製作所のステンレス包丁は、欧米など海外の10カ国以上で販売されている。切れ味がよく、研ぎの頻度が少なく済むとして、国内外の有名シェフが愛用する。「料理を作る職人たちが喜んで使ってくれる。職人冥利(みょうり)に尽きる」と相好を崩す。

 長年の酷使で頸椎(けいつい)を痛め、70代前半には一時歩くのも困難な状態になった。しかし、大手術により復活。今も毎日工場に出る。「今ある以上のものを作りたい。だから体が動く限り、作り続けたい」。刃物への情熱は健在だ。

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