【越山若水】梅雨入りが宣言されて少し陰鬱(いんうつ)な気分である。しとしと降り続きムッとする雨を想像するからだ。しかし最近は豪雨への警戒も欠かせない▼不意の大水がいかに恐ろしいか、昔の人たちも重々承知していた。俳句にも「梅雨出水(でみず)」という季語がある。「目のついてゆけぬ迅(はや)さの出水川 藤崎久を」。激流の脅威が目に浮かぶ▼雨に関する言い伝えも数多くある。宮崎県では「田舎のばあさんとマジの風は手ぶらじゃ来ない」。老いた女性がお土産を持って遊びに来るように、南寄りのマジ風は雨雲を連れてくる▼長野県木曽地方では「白い雨が降ると蛇抜(じゃぬ)けが起こる」。「蛇抜け」とは山崩れや土石流のこと。「白い雨」は1時間に50ミリを超える「非常に激しい雨」に相当するとみられる▼というのも、気象庁では50ミリ〜80ミリの雨のイメージを「滝のようにゴーゴーと降り続く」と表現。屋外の様子は「水しぶきで辺り一面が白っぽくなり視界が悪くなる」と説明しているからだ▼天気ことわざは気象予報士、弓木春奈さんの著書に教わった。ちなみに梅雨の大雨は末期の7月に起きやすい。2004年の福井豪雨しかり、昨年の九州北部豪雨しかりである▼地球温暖化に伴い、近年は短時間で局地的な大雨が珍しくない。「梅雨出水」の恐怖を詠んだ江戸三大俳人・与謝蕪村の有名な句がある。「五月雨や大河を前に家二軒」

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