新酒の仕込みを行う蔵人。徹底した温度管理で深い味わいを生み出す=福井県永平寺町の黒龍酒造本社

 黒龍酒造(本社福井県永平寺町松岡春日1丁目、水野直人社長)は今春、23年ぶりに商品構成をリニューアル。「黒龍」「九頭龍」の2銘柄とともに再出発を図った。黒龍は付加価値をより高め、九頭龍は熱燗(あつかん)酒文化を発信し、日常生活で親しみを持って飲んでもらう。ブランドのコンセプトを明確にすることで銘柄を選びやすくし、若者や外国人ら新たなファンを掘り起こす。

 1992年に日本酒の級別制度が廃止されて以来の大規模な刷新だ。「もともと日本酒は燗文化だった」と水野社長。しかし近年は吟醸系の冷酒が主流となり、「当たり前に飲んでいた酒が特別になってしまった」。そこで「カジュアルでも、うまい酒を届けたい」と、熱燗文化をさらに広めることを一つの柱に据えた。戦略として半世紀以上前に黒龍と並ぶ姉妹品として発売しながら、ブランドに育てきれなかった九頭龍をてこ入れすることにした。

 創業200年の2004年に発売した「九頭龍 大吟醸燗酒」など純米吟醸も含めた九頭龍ブランドは生産量全体の7%程度だった。それを、ことし4月から同社初の純米酒を出すなどして35%まで高めた。熱燗用としてのコンセプトは守りつつ、燗でも冷やしても良し−。日々の語らい、もてなしの場に寄り添う地酒を目指す。

 一方で黒龍はレギュラー商品全てを吟醸酒以上にするなど高級路線を強めた。両銘柄の価格は基本的に、原材料価格の高騰などを背景に一升瓶商品を値上げし、全国的に普及が進む720ミリリットル商品は据え置くか値下げした。「小容量化は日本酒普及の鍵」(水野社長)。冷蔵庫で保管しやすく、テーブルに置いて飲む今の生活スタイルに合わせた。

 和食ブームに乗って日本酒は着実に、海外に浸透しつつある。同社の輸出比率は3%程度だが、これを急拡大させるのではなく、信頼できるチャンネルで限定流通させる方針だ。水野社長は「黒龍ファンを地道に増やし、全国、世界の人々が福井に目を向けてくれるようにしたい。実際に訪れ、食べ物や風土に触れてもらいたい」と語る。

 世界的DJとコラボレーションし、若者が集うクラブでの「音楽と日本酒」という新スタイルも提案する。「お酒を楽しむシーンを創造し、豊かな生活文化に貢献したい」。そんな夢への基礎固めに力を注ぐ。

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