日本中学新記録が表示される電光掲示板の横で喜ぶ奥村仁志=3日、和歌山市紀三井寺公園陸上競技場

 全校生徒はたった9人。福井県大野市の小さな学校から、身長187センチ、体重120キロのビッグなヒーローが誕生した。第70回国民体育大会「紀の国わかやま国体」の陸上少年男子B砲丸投げで、日本中学新、大会新記録となる17メートル85で優勝した奥村仁志選手(和泉中3年)。「いつも明るくて学校では人気者」(同級生)の偉業達成に、家族や関係者、仲間は驚き、喜んだ。

 「本当によく食べる。1日4食は当たり前」。女手一つで育ててきた母の冬美さん(50)は笑う。恵まれた体格を生かして、小学5年から相撲を始めた。和泉中の部活動は剣道と陸上しかなく、中学入学後は相撲と陸上に取り組んだが「(相手とではなく)自分と戦えるのが楽しい」(奥村選手)。次第に投てき競技にのめり込んだ。

 普段は穏やかで優しい性格。しかし、ひとたび砲丸を握れば一変する。同校陸上部顧問の山田善信教諭(47)は「信念をしっかり持って競技に打ち込んでいる。練習もまじめ」と語る。

 「想像していなかった記録。どこまで記録が伸びるのか」。県中体連陸上競技部の伊与啓一副部長(40)は大記録の一報を受け、舌を巻いた。大会新記録で優勝した全国中学体育大会(8月)は16メートル72。ここから2カ月足らずで自己ベストをさらに更新し、日本の陸上界に名を刻んだ。競技終了後は八田天コーチ(48)とがっちり握手を交わし、喜びを分かち合った。冬美さんは「地域のみんなの期待に応えてくれた。うれしいの一言」と目にうっすら涙を浮かべて感慨に浸った。

 同校の遠藤文雄校長(57)は「メンタルの強さ、潜在能力の高さ。言葉がない」と感心しきり。「学校や和泉地域、大野市民の誇り。みんな心から祝福していると思う」と続けた。奥村選手と同級生の林真人君(14)は「中学日本新記録なんてすごい。オリンピックで活躍する仁志を見たい」。5人しかいない同級生の偉業を自分のことのように喜び、さらなる期待を膨らませていた。

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