福井市の産業史研究家、奥山秀範さんが福井県分を執筆した「北陸新幹線沿線パノラマ地図帖」

 昭和初期の東京から北陸エリアに焦点を当てた「北陸新幹線沿線パノラマ地図帖(ちょう)」(能登印刷出版部)が発刊された。当時の代表的な絵師による鳥瞰(ちょうかん)図とともに、東京から敦賀までの22駅周辺の産業や観光を地元の研究者らが解説。福井県分は福井市の奥山秀範さんが担当した。

 鳥瞰図は計71点。実際の風景をデフォルメしたユニークな構図で、鉄道網が発達した大正から昭和初期にかけて鉄道旅行のガイドとして一世を風靡(ふうび)した。当時の代表的な絵師、吉田初三郎の作品をメーンに使用。オールカラーで鳥瞰図を大きく扱い、昭和期の東京から北陸をめぐる旅が体験できる一冊となっている。

 奥山さんは福井新聞社「ふくい歴史回廊」にも執筆中の産業史研究家。「多くの文人墨客が愛した関西の奥座敷・芦原温泉」「世界にその名を轟(とどろ)かせた人絹王国・福井」「新旧技術が融合した県下一の産業都市・南越」「国際色豊かな日本海側屈指の港湾都市・敦賀」のタイトルで当時の4駅周辺の商工業を詳述した。

 奥山さんが見どころとしているのは、織物で世界市場に名をはせた福井と、欧州の玄関口だった国際都市敦賀。

 吉田の鳥瞰図「福井市」(昭和10年)には人絹会館や精練加工会社、福井紡績会社、国営織物検査所が描かれ、「近代福井」の到達期がうかがえる。一方、敦賀は金子常光による鳥瞰図「敦賀名所案内」(同4年)を掲載。敦賀港側から港湾都市を望み、海上には樺太、大連、ウラジオストクなどへの航路線が描き込まれている。港内にはれんが倉庫が建ち並び、税関出張所や敦賀港駅などの施設群も。

 奥山さんは「懐古趣味でなく、これからの福井をどうしていくのかという視点でまとめた。近代福井の到達点だったころがビジュアルに理解できる。産業、観光を考える参考にしてほしい」と話している。

 B5判、144ページ。2700円(税込み)。

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