山野さんが管理しているビオトープに降り立った2羽のコウノトリ=2月、福井県越前市安養寺

 国の特別天然記念物コウノトリをシンボルに、生き物と共生する社会を目指す福井県越前市の「コウノトリが舞う里づくり」は、本年度で実施計画の前期5年が終了する。市は後期(2016〜19年度)に向け、来年3月に計画改定を予定しており、農業者や住民代表らでつくる改定会議で議論が行われている。成果と課題を踏まえ、どのような取り組みが求められるのか探った。

 ■飛来という成果

 田んぼの奥にある越前市安養寺のビオトープにことし2月、野外に生息するコウノトリ2羽が降り立った。休耕田を利用したこのビオトープは2012年、市の呼び掛けに応じて近くの山野長太郎さん(68)が造った。

 切った竹を水面に浮かせ、ドジョウやオタマジャクシの“隠れ家”をつくるなどの工夫もあり、市の調査では年々生き物が増えている。山野さんは「草刈りや雨後の水管理などを続けてきた。2羽がいるのを見たときは、何とも言えない気持ちだった」と振り返る。

 市は11年3月の舞う里づくり構想に続き、12年3月に実施計画を策定。具体的な取り組み内容や数値目標を示し、「里地里山の保全再生」「環境調和型農業の推進と農産物のブランド化」「学びあいと交流」という三つの方針を推し進めてきた。

 実施計画に沿う形で、休耕田のビオトープは14年までに3・6ヘクタール、退避溝は10・2アール増加。水田魚道は10カ所増えた。学びの分野では、有機農業の研究などで知られる保田茂神戸大名誉教授を講師に招き、食や農、環境のつながりを学ぶ「ごはん塾」を全地区で開催した。無農薬無化学肥料の「コウノトリ呼び戻す農法米」など特別栽培米の作付面積も県内全体の約4割を占めている。

 ■応援団増やす好機

 市農政課は、前期の成果について「まずは西部地域(白山・坂口地区)を中心に、里地里山の環境整備が進んだことではないか」と総括する。実際、両地区での取り組みは、コウノトリの餌場づくりの観点などから高い評価を受けている。

 一方で、今後の課題として市全体への広がりを挙げる。ハード面の整備は両地区に集中。意識面でも市内で温度差があるという指摘がある。

 こうした中、今秋には県が白山地区で飼育するコウノトリ2羽を放鳥する。舞う里づくり推進協議会長で改定会議の議長を務める北川太一県立大教授は、今後の農業は環境に優しい農産物の購入など消費者理解が不可欠と強調。その上で「コウノトリをシンボルとしたこの政策は、市内外の応援団を増やす効果が高い。コウノトリがより身近な存在になればチャンスだし、そのためにも住民の認知を高めることが必要」と説く。

 ■息の長い取り組み

 市は合併10周年に合わせ、10月に「環境・文化創造都市宣言」を行う。舞う里づくりは、このうちの「環境」を担う市の看板政策といえる。奈良俊幸市長も舞う里づくりは息の長い取り組みだと何度も述べてきた。

 27日に開かれた改定会議では、ごはん塾に関して委員の一人から「保田先生に来てもらっている間に、次のごはん塾を担う人を育成しておくべきだった」という指摘があった。取り組みを続けていくには、担い手の発掘や育成が欠かせない。

 北川教授も「第2ステージ(後期)は人づくりが、より重要になるのでは。地域に必ず人材はいる。行政任せにならないよう、市民力で取り組みが進むような機運を市は、うまくつくってほしい」と期待を寄せている。

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