藤田宜永さんの長編小説「血の弔旗」

 福井県福井市出身の直木賞作家、藤田宜永さんが、3年の歳月をかけた長編小説「血の弔旗」をこのほど、講談社から刊行した。大藪春彦や生島治郎といったハードボイルドの系譜を受け継ぐ藤田さんの原点ともいえる犯罪小説。戦後70年を経て、戦争とは、昭和という時代とは何だったのかを問いかける。

 1966年8月15日、戦後の混乱期に金貸しで財を成した原島勇平の運転手である主人公の根津謙治は、学童疎開で知り合った3人の男と組んで原島の裏金11億円を強奪する。しかし、アクシデントで屋敷に居合わせたクラブのママを射殺してしまう。

 事件は大きく報道され、根津は厳しい取り調べを受けるものの、4人のつながりは誰にも知られず未解決のまま時は過ぎる。4年後、奪った金を山分けし、根津は結婚して事業に成功するが、時効直前になって見つかった戦争の遺物をめぐり、彼らの周りに次々と新たな事件が起こる。

 根津の犯行を執拗(しつよう)に疑う刑事、金の奪還をもくろむ原島や裏社会の人間との息苦しいまでの駆け引きは圧巻。戦中と複雑に絡み合う昭和という時代が、当時の事件や世相、風俗などとともに克明に描き出されている。

 藤田さんは「犯罪小説(ハードボイルド)の先駆者、大藪春彦氏や生島治郎氏は引き揚げ者だった。だから犯罪小説はもうひとつの戦後文学。彼らに対するオマージュを込めて、この作品を書いた」としている。

 580ページ。税別2200円。

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