菊崎校長(手前)に優勝旗を渡す篠原涼主将=2日、福井県敦賀市の敦賀気比高

 グラウンドに チームメートの笑顔あり―。高校野球の全国大会が始まって100年。その節目に頂点を極め「敦賀気比」の名を全国に刻んだ。優勝がきまった瞬間、高校野球の聖地は、縦じまのグレーのユニホームを着たナインの笑顔でいっぱいだった。

 昨年夏―。福井県勢初の決勝進出が懸かった甲子園準決勝。大阪桐蔭とのスコアは9-15。この大敗が、ナインの原動力になった。県勢初の悲願へ、時計の針はここからゆっくり動きだしていた。

 主戦平沼翔太や篠原涼、山本皓大ら主力が新チームに残ったものの、例年夏場こなしていた練習試合は30~40試合減り、わずか1カ月足らずで秋の県大会が開幕。“ぶっつけ本番”で、自分たちはどれだけ戦えるのか。不安を抱きながらのスタートだった。

 こうした危機感が、ナインの練習に取り組む姿勢を変えた。「試合ができなかった分、どこよりも練習しないと」(篠原主将)。ノックや打撃練習など、普段の何げない練習で今まで以上に“1球への集中力”を高めた。練習後の自主練習には自然と選手が集まり、練習時間ぎりぎりまでバットを振り続けた。

 秋の県大会は準優勝。北信越大会では、準決勝までの計3試合をコールド勝ちし、全4試合で失点はわずか2。実戦を積み重ねるごとにチームは着実に力をつけ「一戦一戦成長していく姿があった」(東哲平監督)。

 冬場は、振り込みなど地味な練習を延々と続け、体と精神力を鍛え上げながら、春を待った。迎えたセンバツ大会。篠原主将の選手宣誓で熱戦の火ぶたが切られ、ナインは接戦を次々とものにした。優勝候補筆頭の仙台育英(宮城)戦は、大会屈指の右腕対決で主戦平沼が投げ勝ち、強打の静岡は、2年生林中勇輝の劇的なサヨナラ打で退けた。そして、昨夏と同一カードになった準決勝の大阪桐蔭戦。“あの夏”の悔しさを晴らすように打線が開花。11安打11得点の猛攻で雪辱を果たし、決勝の舞台へ登り詰めた。

 東海大四(北海道)との初優勝を懸けた一戦。チームは一つになった。何度も迎えたピンチを平沼の強気な投球で打ち取り、野手陣のここ一番での堅守がエースを助けた。指揮官も毎回熱い言葉で選手を鼓舞。チームの思いが詰まった1球を松本哲幣が左翼席へ放り込んだ。一丸でつかんだ悲願だった。

 「この瞬間を待ち望んでた。絶対できると思ってここまでやってきた」と目を赤くした指揮官。閉会式後、篠原主将は喜びに浸りながらも「今の実力では夏の甲子園はもちろん、県大会でも勝てない。しっかり練習してまたここに戻ってきたい」と表情を引き締めた場面があった。その視線は、春夏連覇を見据えているようだった。 

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 選抜高校野球大会に2年ぶり6度目の出場を決めた北信越代表の敦賀気比が、福井県勢初、北陸初の全国制覇を成し遂げた。チームのこれまでの軌跡をたどる。

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