ティンパニーのマレットを製作する福井大学4年の新保雅章さん=福井県福井市上野本町新の自宅

 福井大学4年の新保雅章さん(25)=福井県福井市=が自宅の一室で手作りしたティンパニーのマレット(ばち)が、国内外のプロ奏者に採用され、数々の名門楽団の音色を支えている。マレット製作家として2016年からオーダーメードのネット販売を始め、ヘッドの大きさやシャフトの太さの絶妙なバランスが高い評価を受けている。「僕自身が世界一流の演奏の一部になれたようでうれしい。世界の市場にもっと働きかけたい」と充実感をみなぎらせている。

 羽水高校の吹奏楽部時代から打楽器を担当し、2年間在籍した福井大の吹奏楽部でティンパニーと出合った。部を離れてからも県内外の楽団で演奏活動を続ける傍ら、「自分の道具は自分で作ってみたい」と、ホームセンターの材料で現物を参考に見よう見まねで作り始めた。演奏仲間から製作を頼まれるようになり、「工夫して試行錯誤すれば結果に表れる」ことに魅力を感じ、製作家の道に進んだ。

 ネットオークションでの販売を経て、16年に自身の販売サイトを開設した。17年秋には、欧州に2カ月間留学。イタリアの製作家に弟子入りし、ドイツとスイス、オランダでは各国の一流奏者の助言を受けた。本場での“武者修行”で磨いた技術が、プロ奏者の目に留まった。

 ティンパニーのマレット製作家は、国内で20人程度。奏者としてプロ経験がない新保さんは異色の存在だ。

 こだわるのは、まず材質。シャフトには肉厚な中国産の竹を使用。ヘッドは、固い圧搾コルクを芯に、毛並みがそろったドイツ製のフェルトをかぶせる。バランスにも細心の注意を払う。ヘッドは大きいほど音が柔らかく、シャフトは細いほどしなりが良くなる。「重さで1グラム、長さで5ミリ変われば、もう別物。同じたたき方でも大きく音が変わる」。奏者の好みに応じ、仕上がりを調整していく。

 NHK交響楽団、ドイツのバイエルン国立歌劇場管弦楽団やフランクフルト放送交響楽団、米国のニューヨークフィルハーモニック。世界の名だたる楽団の奏者にマレットを納めた。演奏全体のリズムを左右するティンパニストは「第二の指揮者」とも呼ばれ、「素晴らしい楽団を縁の下で支えるのが喜び」という。

 フランクフルト放送交響楽団は6月15日、福井市の県立音楽堂で県内初のコンサートを開く。新保さんにとっての“凱旋公演”でもあり、「自分のマレットを使った海外楽団の演奏を生で聴くのは初めて。実際に音色を確かめたい」と心待ちにしている。

関連記事
あわせて読みたい