【論説】小型無人機ドローンの「目視外飛行」について国が、安全確保などの要件を取りまとめた。ドローンに関しては今年、山間部など無人地帯での目視外飛行の実現に向け、官民挙げた取り組みが進んでいる。要件づくりは環境整備の一環だ。

 専門家は、ドローン技術開発は現在、「2~3合目」だとしているが、その分、大きな伸びしろがあることになる。利活用の要望やアイデアがあれば、それに応える技術が、どんどん生まれてくるはずだ。ドローンは今後数年で、空間利用の概念を大きく変える可能性を秘めている。

 ■レベル4も間近■

 国は昨年5月、「空の産業革命に向けたロードマップ」を作成。2018年は、離島や山間部への配送、被災状況調査、捜索など、無人地帯での目視外飛行実現を目指すとしている。3月にまとめた要件は、目視外飛行ができる場所や高度を設定。飛行エリアで人の存在を把握する必要性なども定めた。

 目視外飛行の実現で、山間部での戸別配達などに成功すれば、利便性が広く実感されるだろう。これは4段階あるドローンの飛行水準のうち、上から2番目のレベル3に当たる。

 福島県では大規模なテストフィールドが整備されており、衝突回避技術や機体の信頼性向上などの開発スピードは、これから加速するはずだ。ロードマップは20年代ごろに、都市部上空を含む「有人地帯での目視外飛行」(レベル4)が当たり前になる社会を想定している。

 ■日本の強み■

 ドローン産業をリードするのは中国で、そのトップ企業は日本や米国で8割前後の占有率があるとのデータもある。しかし、日本ドローンコンソーシアム会長の野波健蔵さん(坂井市出身)は、ドローン産業を「ソリューション(問題解決型)産業」と指摘した上で、日本に強みはあると強調している。

 ドローンの用途は現在、空撮が最も多く、インフラ点検、農業などが続くが、利活用の可能性はさまざまな場面に拡大している。野波さんによると、日本製品は価格では中国製に及ばないが、カスタマイズの面で優れた技術を有し、多様な要望に応じることができる。中国製は保守サービスにも課題があるという。日本が市場で存在感を発揮していく余地は十分ある。

 5月に福井市で講演した野波さんは、専門的な進化を遂げつつあるドローンをいくつか紹介した。例えば、下水道点検用のドローンは、流線形の機体にプロペラを内装、直径40センチのパイプ内を進むことができる。別のドローンは、機体が周囲と接触する際の衝撃を緩める球体上の外殻を備えている。設備の打音点検用に開発されたドローンの打検機は、水平方向や上方向に角度を変えられる優れ物だ。

 ■高齢化社会の備え■

 ドローン開発に課題はある。レベル4の飛行実現には衝突回避技術の高度化が重要だ。通常は雲の上を飛ぶ有人航空機に比べ、雨、風、雷などの環境対策もシビアという。飛行ルールの明確化も欠かせない。

 ただ、野波さんは、全国で各種インフラが老朽化する一方、少子高齢化により人手が不足する中、ドローンが必要とされる場面は広がっていくとする。

 講演で野波さんは、「屋根雪下ろしにドローンは使えるか」との会場からの質問に「原理的には、プロペラの風圧で雪を飛ばすことが可能」と即答した。技術応用の懐の深さを感じるやりとりだ。「飛行ロボット」と位置付けられるドローンを、社会の隅々で活躍させられるかどうかは、人々のアイデア次第といえるだろう。

関連記事