【論説】政府が提示した経済財政運営の基本となる「骨太方針」案は、財政健全化の旗を掲げてみせながらも、歳出改革の数値目標設定を見送るなど、ちぐはぐな印象だ。2019年10月の消費税増税や、20年の東京五輪・パラリンピック後に向けた対応として、財政出動の余地を残す必要があったからとみられる。財政健全化の実効性をどう確保するか、課題は先送りされた。

 方針案は、新たな経済・財政再生計画(新計画)の策定を明記。その3本柱は引き続き▽デフレ脱却・経済再生▽歳出改革▽歳入改革―とした。財政健全化の前提には、実質2%程度、名目3%程度を上回る経済成長を置いている。

 ただ、この成長率は実現できるのか。実現したとして、持続的なものになるのか。政府はデフレ脱却はできていないとの立場だが、国内景気は長期回復が継続中で、既にデフレでない、とみる専門家も多い。

 それでも実質成長率は、18年度政府見通し(1月)が1・8%、経済協力開発機構(OECD)の18年予測(5月)が1・2%にとどまる。実質2%程度は高い水準なのであり、今後さらに進展する少子高齢化も経済再生と財政健全化の制約要因である。

 歳出改革にも問題が大きい。方針案は社会保障などの数値目標を今回、設定しなかった。基礎的財政収支の黒字化目標時期を5年遅らせて25年度とする中で、歳出改革の手綱が緩む可能性がある。政府は5月下旬、40年度の社会保障給付費が約190兆円に上るとの推計を公表していたが、そこへ向けた対応は手つかずとなった。

 新計画は、19〜21年度を「基盤強化期間」と位置付けるが、この間に巡ってくるのが消費増税や五輪・パラリンピック。方針案は、これらに伴い起きるとみられる家計負担増や需要減退の対策を、現下の経済の重要課題に挙げている。秋には自民党総裁選も控える。当面、財政出動の手足を縛られたくない、という政府の本音が透けてみえる。

 茂木敏充経済再生担当相は数値目標を見送った理由を、高齢化のペースが一時緩まることや賃金、物価の上昇予測などが「今後3年間の変動要因であるため難しい」とした。数値は予算編成の中で明らかにする考えも示した。しかし、今回の方針案は新計画策定という機会でもあり、少なくとも歳出改革の筋道は詳細に提示するべきではないか。

 基礎的財政収支の黒字化時期は、当初目標の20年度はもともと困難だったとはいえ、昨年の衆院選の際、消費増税の使途変更によってあっさりほごになった。そして今回の歳出改革数値見送り。財政運営に機動性や弾力性は必要としても、社会保障に対する安定財源確保は、場当たり的に対応できるような生易しい課題ではないだろう。

 25年度、あるいは40年度という将来の節目を、政治は責任をもって見据えているのか。先送りばかりが目立つ方針案が、課題解決に役立つとは思えない。

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