【越山若水】横浜市出身の30代の青年は、その村に初めてやって来た翌月にはもう移住してきた。段々畑と石垣が残る景色に一目ぼれした。「歴史のなかに入り込めると思ったら、うれしくって」▼全国の市町村で一番「消滅可能性」が高いことで有名な群馬県南牧(なんもく)村の例である(「地域に希望あり」大江正章著、岩波新書)。よそごとながら興味深い▼若者の田園回帰、農山村移住といった近年の傾向が、この例に見て取れる。でも、われわれ地方人が確信を持つには至らない。移住者の絶対数がまだまだ少ないからだ▼そう思っていたら、隣の韓国でびっくりするような現象が起きていた。大都市から地方へ移住したり農業をしたりする帰農・帰村者が急増しているという▼最新の統計は不明だが、2011年に1万世帯を超えると爆発的に増え、14年は約4万4千世帯8万人余りに。00年から数えると、これまでに50万人超が地方に移住した計算だ▼人口5千万余りの国で、これは驚くほど大きな数字。一方で、首都のソウルは16年に大台の1千万人を割り込んで以降、人口の流出が続いている▼劇作家の平田オリザさんによれば、韓国は「日本以上の競争社会」で「国家全体がブラック企業化している」。とはいえ、国勢が下り坂にある点で日韓は「合わせ鏡のような存在」だ。隣の鏡が映す像をよくよく見つめないといけない。

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