3選を果たしバンザイする奈良俊幸氏(中央)=20日午後10時35分ごろ、福井県越前市府中1丁目の選挙事務所

駆けつけた支持者と笑顔で握手する奈良氏(中央)=20日午後10時5分ごろ、福井県越前市府中1丁目の選挙事務所

支持者らにお礼を述べる大久保氏=20日午後10時25分ごろ、福井県越前市押田2丁目の選挙事務所

 任期満了に伴う福井県越前市長選は20日投票が行われ即日開票の結果、現職の奈良俊幸氏(51)=同市片屋町=が2万2535票を獲得、前市議で新人の大久保恵子氏(62)=同市北府3丁目=に1万4563票の大差をつけ、3選を果たした。新庁舎の建設位置などをめぐり8年ぶりの選挙戦となったが、市政の継続を訴えた奈良氏が圧勝した。

 投票は午前7時から市内32カ所で一斉に行われた。有権者の出足は鈍く、投票率は47・06%と旧武生、今立両市町の合併に伴い新市のリーダーを選んだ2005年の選挙を28・61ポイント下回った。

 奈良氏は、現職の強みを生かして各種団体から幅広い推薦を受け、有利に選挙戦を進めた。2期8年で取り組んできた実績をアピール。中小企業振興条例の制定や北陸新幹線南越駅(仮称)周辺整備、福祉・教育の充実、防災対策、新庁舎の現在地での建て替えなど90項目に及ぶマニフェスト「えちぜん元気プログラムⅢ」を掲げ、「奈良市政を継続するべきか改めるかの審判をいただく選挙」と強調し、支持を広げた。

 一方、大久保氏は9月下旬の立候補表明と出遅れが響いた。新庁舎位置を日野川東部に移転する考えを前面に出して、合併協定と異なる現庁舎位置での建て替えを表明した現職を批判。市東部地域を中心に票の掘り起こしを図ったものの、浸透しきれなかった。

 奈良氏は午後10時5分ごろ、同市府中1丁目の事務所で支持者の歓声と拍手に迎えられステージへ。両手を高々と上げて何度も万歳し、喜びを表した。
 開票は午後9時15分から市民ホールで始まり、約1時間15分後に確定した。


【越前市長選開票結果(選管最終)】

当 奈良 俊幸 22535
  大久保恵子  7972

 【奈良氏の略歴】
 なら・としゆき 早稲田大政治経済学部卒。松下政経塾を経て、1991年に県議初当選。4期目途中に辞職して2005年の旧武生市長選で無投票当選。合併に伴う同年の越前市長選で新人2人を破り、初代市長に就任した。09年、無投票で再選を果たした。51歳。片屋町。

【奈良氏の公約】
1、幅広い産業の立地と振興を図り、雇用の安定に努めます。

2、地域福祉の充実を図り、夢を育む教育・文化・スポーツを推進します。

3、自然環境と調和した都市基盤の整備と定住化の促進に取り組みます。

4、地域防災力・消防力の充実と交通安全・防犯対策の強化を図ります。

5、市民と協働のまちづくりを進めます。

6、元気な自立都市の運営を職員とともに進めます。


【解説】

 新庁舎問題など奈良氏の市政運営に対する批判票の行方が注目された選挙だった。しかし、新庁舎位置に関するそれぞれの課題が十分浸透しているとはいえず、他の政策面で大きな違いが見られなかった中で、市民は2期8年の実績を選択した。

 奈良氏は6月定例市会初日に出馬を表明。一時は無投票の公算が大きくなり、告示後は「現職優位」の楽観ムードが漂ったが、18日の総決起集会に1千人を超える支持者を集めるなど引き締めを図った。

 選挙戦では市長の実績と経験を前面に押し出した。90項目に及ぶマニフェスト「えちぜん元気プログラムⅢ」では17地区全ての振興策が示されているといわれるように、これまで幅広く堅実な施策を進めてきた姿勢が市民の評価を得て、今回の結果につながったといえる。

 一方の大久保氏は、9月下旬の出馬表明と出遅れ、前市議とはいえ知名度が十分とはいえない中での苦しい選挙戦となった。市民グループの仲間を中心とした、組織に頼らない草の根運動を展開したが限界があった。

 新庁舎問題をめぐり奈良氏の市政運営を批判、市東部地域や表には出てこなかった反現職の一定の受け皿となった。しかし、合併協定の経緯や跡地の活用などの考えを浸透させるには時間が足りなかった。

 選挙に勝ったとはいえ、本紙世論調査では3割を超える市民が東部移転を支持するなど、奈良氏の方針に対する批判が少なからず浮き彫りになった。奈良氏は投票率の低さと、大久保氏に流れた票を重く受け止めたい。



奈良氏「マニフェスト着実に」 気緩めず市政発展決意

 20日投開票された越前市長選は、現職の奈良俊幸氏が市民の信任を勝ち取り3選を果たし、同市府中1丁目の選挙事務所で歓喜の声を上げた。「マニフェストを着実に推進しながら、支援に対しご恩返しをしていきたい」と意気込む奈良氏に対し、集まった支持者から割れんばかりの拍手が沸き起こった。

 午後10時、開票率42%の1回目の中間速報で奈良氏と大久保氏の得票に3千票の差が開いた。5分後に、奈良氏が事務所に姿を現すと、待ちかねた支持者にもみくちゃにされながら次々と握手を交わした。

 妻の恭子さん、祝福に駆け付けた県選出国会議員や県内首長、県議、越前市議らと特設ステージに立った奈良氏は、晴れやかな表情で両手を高々と上げて応え、万歳三唱で喜びをかみしめた。

 相木七良右エ門後援会長が「気分を一新してますます市の充実、発展のために活躍できるものと期待している」と、奈良氏に呼び掛けた。

 選挙期間は「現職優位」の空気が漂う中でも「最後まで懸命に政策を訴えていきたい」と、決して気を緩めなかった。支援者に向かって深々と頭を下げると「17地区の後援会や推薦を受けた皆さまをはじめ、多くの市民の絶大な支援を受け、3期目の市政を担わせて頂くことができることを感謝します」と述べ、市政の発展を約束した。


大久保氏 険しい表情 「また市民活動 力尽くす」

 「なんで」「どうして」―。1回目の開票速報が終わった午後10時すぎ、現職の選挙事務所で拍手が沸き起こる様子がテレビに映し出されると、困惑した支持者らの声が越前市押田2丁目の選挙事務所内に漏れた。大久保氏は、険しい表情でじっとテレビ中継を見つめた。

 「おかげさまで、気持ちの良いさわやかな選挙をさせていただいた。ありがとうございました」。落選が濃厚となった同10時20分ごろ、大久保氏は繰り返し支持者らに謝辞を述べ、頭を下げた。

 「結果は敗戦でしたが、庁舎位置をはじめ将来のまちづくりについてもう一度議論を巻き起こすきっかけになれば。明日からまた市民活動を通して、元気なまちづくりに力を尽くしていきたい」と前を向いた。

 支持者の中には涙を流す姿も。それでも「よくやった」と拍手で言葉を掛け、準備が遅れながらも、わずかな期間で戦い抜いた労をねぎらった。

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