【論説】文化庁の「日本遺産」として2017年度に認定された「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜」に5月、坂井市と小浜市の文化財が追加された。福井県は北海道から島根、広島県に及ぶ広域遺産の中央に位置する。坂井市では主要寄港地としての歴史的価値を踏まえ、“北前船の聖地”として地域づくりに生かす機運も高まっている。認定地の連携、交流人口拡大などに主導的役割を担い、三国湊(みなと)の新時代を切り開きたい。

 日本遺産は地域の有形、無形の文化財を特定のテーマでまとめ、魅力を発信するもの。「北前船寄港地・船主集落」は、北前船が行き来した日本海、瀬戸内海沿岸の寄港地に残る商家や船主の屋敷をはじめとする幅広い文化財群。敦賀市、南越前町を含む7道県11市町が申請、17年度に認定を受けた。

 5月に追加されたのは27市町村。坂井、小浜両市は共に重要な寄港地として栄えていたことが理由となった。特に坂井市三国町は日本遺産のストーリーに組み込まれた文化財が瀧谷寺や料理茶屋「魚志楼」(松崎家住宅)など19件あり、全国の認定地で最多を誇る。

 三国の町並みは、寄港地として栄えた江戸時代からのもの。九頭竜川沿いに立ち並ぶ町家や商家、土蔵、旧遊郭など、古い港町ならではの風情が漂う。「かぐら建て」といわれる三国湊独特の町家である旧岸名家住宅などが並び、三国祭の山車(やま)が練り歩く道をたどれば、北前船の船頭の船歌として発祥したともいわれる三国節の「帯の幅ほどのまち」の歌詞が実感できる。

 5月27日には、北前船ゆかりの地が交流する寄港地フォーラムが中国・大連市で開かれた。海外開催は初めてで、交流エリアは一段と広がっている。上海市観光局の徐未晩(じょみばん)局長は、日本側との観光情報発信、商品開発に意欲的だった。新たな展開が生まれる可能性もある。

 坂井市の今後に向けた弾みとなりそうなのが、7月12〜14日に同市で開かれる県内初の同フォーラムだ。24回目で初めて「研究交流セミナー」がプログラムに組み込まれ、第一線の研究者や学芸員らが集い、学術的観点から北前船の歴史、文化を考察する。これまで中心となっていた観光振興の側面に加え、有形、無形の文化を継承して生業につなげるというフォーラム本来の趣旨に沿った内容が用意されている。

 歴史、文化を生かした地域活性化や町並み保全に取り組む一般社団法人「三國會所」の大和久米登理事長は、今月4日に開かれた総会で「日本遺産認定を、胸を張ってこれからの活動を進める糧にしてほしい」と会員に呼びかけていた。認定が、住民活動を通じて地域のアイデンティティーの再確認につながることを期待したい。

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