【論説】学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書の改ざん問題で、財務省は調査報告書を公表した。「私や妻が関係したとなれば、首相も国会議員も辞める」という安倍晋三首相の答弁をきっかけに、当時理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官が国会紛糾を回避するため、交渉記録の廃棄を主導したと認定した。首相に忖度(そんたく)した佐川氏を、さらに理財局総務課長らが忖度した構図がみえる。

 ただ、佐川氏が昭恵夫人の関与を意識したか否かなど真意には言及していない。3月の証人喚問で「訴追の恐れ」を理由に証言を拒んだ。大阪地検は既に不起訴処分としている。ここは再喚問すべきだ。麻生太郎副総理兼財務相は閣僚給与1年分を自主返納した上で続投する意向だが、前代未聞の不祥事に省トップが責めを負うのは当然だ。

 調査報告では、これまで財務省が「書き換え」としてきた表現を「改ざん」と初めて明記した。悪質性を認めたのだろうが、遅きに失した。動機については、佐川氏らの国会答弁と齟齬(そご)をなくして「国会質問を極力少なくするため」などとした。

 近畿財務局では職員らが改ざんに反発していたことも明らかになっている。佐川氏はうそを重ねた結果、民主主義の根幹を揺るがす公文書の改ざん、廃棄へ手を染めざるを得ない状況に自ら陥ってしまった。愚行と言うしかない。

 交渉記録を巡っては、昨年2月17日の首相答弁をきっかけに、理財局総務課長らが昭恵夫人の名前が記された記録の存在を確認し他の議員秘書らによる照会記録とともに廃棄。改ざんに関しては同2月26日、定期借地契約を申請する決裁文書から、昭恵氏の名前などが書かれた箇所を削除する形で始まったとしている。

 改ざんと9日前の首相答弁との関係は明らかにされていないが、首相への忖度だろう。総務課長らから取り扱いを相談された佐川氏が「外に出すべきではない」と応じたことが契機となった。佐川氏は「具体的には指示しなかった」としたが、その後も自身の答弁を踏まえた内容に変えるよう念押ししたり、部下に「しっかり見るように」などと述べたりするなど主導は明白だ。

 処分は佐川氏を停職3カ月相当とし、退職金を減額、総務課長を停職1カ月とするなど関係幹部・職員計20人に及んだ。ただ、近畿財務局の男性職員が「書き換えさせられた」との趣旨のメモを残して自ら命を絶ったことを思えば、妥当か否か問われよう。大阪地検の不起訴処分を受け配慮した節も透ける。

 麻生氏は先月、改ざんに関し「どの組織でもあり得る。個人の資質によるとことが大きい」と暗に佐川氏1人に責任があるような発言をしている。ならばそのような人物を理財局長、さらには「適材適所」と言って国税庁長官に起用した責任こそ問われるべきだ。再発防止策として最も有効な策は、省トップのけじめ以外にないはずだ。

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