【越山若水】2010年にテレビ放送された「ハーバード白熱教室」をご存じだろう。米ハーバード大のマイケル・サンデル教授が正義とは何かについて、学生と徹底的に討論する授業が新鮮だった▼その講義をまとめたのが「これからの『正義』の話をしよう」(早川書房)である。その中で討論の材料として全く対照的な2組の兄弟の話を紹介している▼まず兄は高校を中退しギャングのボス、指名手配で逃亡中だ。弟は法律の学位を取得し州の議員になった。兄と電話で話したが「所在は知らない」と捜査協力を断った▼もう一方は爆弾テロ犯のケース。犯行声明を読んだ弟はその文章に見覚えがあった。ハーバード大を卒業後に姿を隠した兄の思考にそっくり。悩んだ末に弟はFBIに通報した▼世間の反応はさまざまだ。「誰も家族を密告したりしない」「正しい道でなくギャングの掟(おきて)に従った」「弟は裏切り者ユダ」「テロを防げるのは彼だけ。正義の行動だ」▼サンデル教授はどちらが正しいか判定しない。時と場合で評価が変わるからだ。それより正義を語るとき、普遍的な道徳や善良性が重要だと強調する▼森友学園の決裁文書改ざんで、財務省が調査報告書をまとめた。やはり安倍首相の「首相も国会議員も辞める」という答弁が引き金だった。道徳観も善良性も欠如し正義感も希薄だ。官僚の掟なら即改めるべし。

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