がれきの撤去作業が進められているべにや=6月4日、福井県あわら市温泉4丁目

 福井県あわら市温泉4丁目の老舗旅館「べにや」の火災から6月5日で1カ月。店舗兼住宅など6棟を全焼した昨年10月に続く火災に、市観光協会などには「あわらは本当に大丈夫なのか」との問い合わせが相次ぎ、風評被害への懸念も出ている。各旅館は緊急の防火点検を行ったり、従業員の危機管理意識の徹底を図ったりするなど安全態勢を再確認。「安心して泊まってほしい」と訴える。

 べにやの火災以降、市観光協会には「あわら温泉に泊まりたいが、本当に安全なのか」といった声が県内外から相次いで届いた。出火原因はまだ特定されていないものの、べにや近くに住む女性は「どういった防災体制だったのか。他の旅館は大丈夫なのか。『残念』『かわいそう』だけでは不安は消えない」と指摘する。

 「火事は人ごとではない」。ある旅館では火災翌日の5月6日、従業員を前に幹部が訴えた。火災直後から、電気配線の何らかのトラブルが出火原因との見方が広まったこともあり、館内の防火設備に加え、電気配線の緊急点検も行い、安全性を確認した。館内の小さな変化も見逃さぬよう、従業員同士の声かけもさらに徹底しているという。

 別の旅館でも火災直後に業者を交え防火設備を点検、スタッフと夜間の避難方法などについて改めて確認した。この旅館は「あわら温泉として同じことを繰り返すことはできない」と細心の注意を払う。

 べにやでは今月1日から現場のがれき撤去が始まり、3カ月後には、温泉街の中心地にぽっかりと空白地ができる。奥村隆司社長は火災直後から再建への思いを語っているものの、道のりは険しい。

 自らも旅館を経営する市観光協会の前田健二会長は「北陸新幹線県内開業を控え、あわら温泉は、市や福井県の観光に大きな役割を担っていると認識している。まずは残った旅館が力を合わせ、あわらを盛り上げるとともに、旅館が安心・安全であることをしっかりと伝えていきたい」と話す。

 ■べにや火災 5月5日午後0時50分ごろ出火。いずれも木造2階建てで国登録有形文化財の本館、中央館、東館の計約3100平方メートルを全焼した。宿泊客や従業員ら8人がいたが逃げ出して無事だった。あわら署や嶺北消防本部は火元を本館2階大広間の天井裏の中央部分と断定。電気配線の劣化や断線が出火原因との見方を強めている。

関連記事
あわせて読みたい