【論説】高浜町の薬草産地化を推進する「青葉山麓研究所」(同町)が今春、一般社団法人となり、町内に薬草育苗センターを完成させた。町の施設「青葉山ハーバルビレッジ」の指定管理者にもなり、飛躍への大きな節目を迎えている。薬草の商品化は容易な道ではなく、未知数の部分もあるものの、メンバーは大きく力を蓄えている。今後の展開が一段と楽しみだ。

 同研究会は2013年に町民有志で発足した。青葉山一帯には500種類を超す薬用植物が自生している。薬草を経済活動に結びつけようと、栽培や商品化に取り組んできた。

 製薬会社などでつくる東京生薬協会と連携し、薬草に関する専門知識を積み上げる一方、栽培・加工技術などを研究。昨年、努力が実り、漢方薬の原料となる植物「ゴシュユ」を生薬として商品化することに成功した。本年度は、1千平方メートルだった栽培面積を7倍に増やす予定。栽培農家も約20軒へと一気に増えた。

 薬草生産には一般の農作物にはない課題が多い。山野に自生する薬草をいきなり平地に植えても、土壌や環境の違いで育つかどうか分からない。有効成分が少なければ、同量でも価格は格段に違う結果になる。さらに加工技術習得や法規制のクリア、農機具の開発による収穫作業の効率化、販売ルート開発など、取り組むべきテーマは山積する。

 同研究所では課題を克服するために、知識・情報の収集、研究、営業などの面で、農家に対する司令塔的役割を果たしている。その中で、苗を育て生薬の加工もできる育苗センターというハードの完成は、大量生産への道筋を大きく開いたといえる。

 現在、京都の問屋に卸しているゴシュユは、医師が処方し煮出して服用する昔ながらの薬として使われ、信用のおける国産品が求められている。製薬会社の顆粒(かりゅう)薬とは違い、買い取り価格が高いほか、少量でも納入できるため農家が乗り出しやすいメリットもある。

 同研究所では、こういった有利な販売ルート開拓に向け、意欲的な営業活動を続けている。農家の協力で、さらなる耕作面積拡大が期待される。

 指定管理者となったハーバルビレッジでは、大学薬学部並みという生薬標本の展示を始めた。薬草に親しむイベントを開くなど、町内外に「薬草の町」をアピールしていく。本年度は、農家の薬草耕作に町が補助金を出すなど行政支援も充実してきている。

 生薬生産は成分や加工法などに制約が多く、一気に事業を拡大するのは難しさもある。しかし、同研究所と農家が両輪となって、新たな地場産業の創出をぜひ果たしてほしい。

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