宮下奈都さん

 福井県福井市在住の宮下奈都さんの本屋大賞受賞小説を映画化した「羊と鋼の森」が6月8日、全国公開される。ピアノの一音から森を感じ取ったピアノ調律師の青年外村が、さまざまな人との出会いを通して成長していく姿を描いている。ひたむきに求める音を探る青年の姿、ピアノの響き、原作の心打つ言葉が、匂い立つような北海道の美しく豊かな映像とぴたりと重なる。

 北海道が舞台の物語は、将来の夢を持っていなかった主人公・外村(山崎賢人さん)が、高校でピアノ調律師の板鳥(三浦友和さん)に出会い、繊細に音と向き合う世界に魅せられたことから始まる。板鳥が調律した音を聞いた瞬間、生まれ故郷の森とその匂いを浮かべた。この音こそが外村が目指すもので、その感覚的な世界を橋本光二郎監督がみずみずしく表現している。

 やがて調律師となった外村は、憧れの板鳥に「こつこつ、こつこつです」と調律師の心構えを諭され、依頼人の求める音を一途に探る。器用とは言えない外村の背中を先輩の柳(鈴木亮平さん)らがそっと押す。一人前に育っていく外村が、ピアニストを目指す姉妹との出会いによって壁に突き当たってしまう。

 姉妹を演じるのが、実の姉妹でもある上白石萌音さんと萌歌さん。日々練習に励む姉と才能豊かでピアノを弾くこと自体を心から楽しむ妹。2人を見て、外村は調律師に必要なことも才能ではないかと悩んでしまう。姉妹の苦悩も交差しながら、外村の心情が映し出されていく。

 北海道旭川市がロケ地となった。ダイヤモンドダストが舞い、木々の揺れる音が聞こえてくるような豊穣(ほうじょう)な自然。映像と登場人物の内面が響き合い、調律の仕事が深遠なものであることを伝える。

 エンディングテーマ「The Dream of the Lambs」を久石譲さんが作曲し、辻井伸行さんが演奏。現代の音楽界を代表する2人の初の共演が、ピアノの魅力をあらためて伝える。作中に流れる音一つ一つが心に響く。

 県内では、福井シネマ(福井市)、鯖江アレックスシネマ(鯖江市)、敦賀アレックスシネマ(敦賀市)で上映される。

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