【越山若水】注文したご飯に異物が交じっていた。申し出ると店側は「取り除きました」と、もう一度出してきた。確かめたらまだあった。抗議すると「体に害はありません」▼ざっとこんなやりとりを経て、働き方改革法案がきのう衆院を通った。次々に発覚した不適切なデータという「異物」は大勢にのみ込まれた▼野党が反対するのは、データのせいだけではない。法案のなかの「高度プロフェッショナル制度」は後に適用対象が拡大されると心配する。例えば年収要件だ▼いまの目安は1075万円。そんな高給取りではないから、と無関心でいるうちに額が引き下げられ働く人の多くが高プロとして長時間労働に従事する時代が来るかもしれない▼取り越し苦労ともいえない。2015年、高プロを巡り当時の塩崎恭久厚労相が発言している。「小さく産んで大きく育てる」と。法案を通すためにいまは我慢を、と財界に求めたと受け止められた▼平川克美著「喪失の戦後史」に「日本は派遣業者天国」とある。労働者派遣法が32年前に施行され、段階的に規制緩和された結果、事業所数が世界一多くなったからだ▼高プロも同じ道をたどるのではないか、と考えるのは自然なことだ。法案は参院に舞台を移して審議される。はぐらかしの「ご飯論法」で国民はもう胸やけを催している。政府・与党には誠実な答弁を願いたい。

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