【論説】敦賀市の金ケ崎周辺の集客施設整備に向けた基本計画案がまとまった。資料館「人道の港敦賀ムゼウム」の移転拡充のほか、蒸気機関車(SL)を走らせる鉄道遺産の活用計画、民間のカフェやショップ誘致の事業スケジュールなども盛り込んだ。北陸新幹線敦賀開業を見据えた、にぎわい拠点の姿が見え始めた。

 金ケ崎周辺整備の核となるのは新ムゼウムと鉄道遺産活用の2点。新ムゼウムは大正時代にあった建物4棟を復元する形で、欧亜国際連絡列車運行に使われた敦賀港駅や、旅客の入出国を管理した「税関旅具検査所」、大和田銀行創始者の大和田荘七が設立した商船の代理店「大和田回漕(かいそう)部」などの外観を再現する。

 延べ床面積は現ムゼウムの約4倍、約千平方メートル。不十分だった展示スペースを確保するほか、40人ほどの団体客が利用できるようにするという。

 鉄道遺産活用では休線となっている敦賀港線の一部を利用、SLが330メートルを往復する計画だ。太陽光発電でつくる圧縮空気を動力源に、時速5キロ程度を想定している。敦賀駅で使用していた転車台も設置。周辺のランプ小屋、赤レンガ倉庫、旧敦賀港駅舎などを含めエリアの顔として期待される。

 金ケ崎周辺の観光入り込み客数を見ると、2015年10月に観光施設としてリニューアルした赤レンガ倉庫の効果が大きく、16年には35万6100人と倍増。翌年は倉庫の開業特需が減少し29万6400人となったが、市内を代表する観光拠点の一つに育ってきた。

 ただ、人道の港としての史実を有し、国内で早期に鉄道が敷設されたという歴史や遺産がある一方で、そのストーリーを十分に生かし切れていないのが現状だ。市が2年前に北陸3県を訪れた観光客に行った調査でも、敦賀市がどんな場所かイメージを描けない人が多い。観光地としての認識は低いと市は分析する。

 金ケ崎周辺整備では、古きよき時代を感じさせるストーリーをハード、ソフト両面で描けるかが最大の焦点となるだろう。港にSLが走り、往時をしのぶ歴史的建造物があり、難民を受け入れた優しさが今もあふれる街−。これらは敦賀でしか確立できないブランドだ。

 今後、2案あるムゼウム内部レイアウトの決定、鉄道部分の用地協議、運営手法など検討課題は多い。ソフト面では飲食の民間協力をはじめ、常に人が集うイベント創出なども不可欠だろう。気比神宮や敦賀駅周辺など、他の観光資源とどう結び付けていくかも大切だ。新幹線開業まで残り約5年。時間が限られる中、官民による協議が深まっていくことを期待したい。

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