【越山若水】英国の学校では「シティズンシップ・エデュケーション」が必修科目になっている。日本語で言うなら「公民教育」や「市民教育」だろうか▼目的は「社会で積極的な役割を果たすための知識とスキル、理解を生徒に提供する」こと。同国在住のライター、ブレイディみかこさんが新潮社の情報誌「波」5月号に書いている▼11歳の息子に試験の問題を尋ねると「最初が『エンパシーとは何か』、次が『子どもの権利を三つ挙げよ』っていうやつ。楽勝だったよ」と得意そうに返事をした▼「エンパシーって言われても、俺は分からねえぞ。難しくね?」とアイルランド人の父親。「で、お前、何て書いたんだ」とすかさず質問した。「自分で誰かの靴を履いてみること、って書いたよ」▼「エンパシー」を日本語に訳すと「共感」「感情移入」である。さらに「誰かの靴を履く」とは英語でおなじみの慣用表現で「他人の立場に立ってみる」ことを指すそうだ▼世界的に有名な米国のコーヒーチェーン・スターバックスが8千を超える直営店を一斉に閉店した。なぜ?全従業員に研修を受けさせるためという▼今年4月、フィラデルフィアの店で黒人を排除する人種差別が発覚し、全米から批判が噴出した。研修は再発防止とイメージ回復が狙いだが、テーマは「エンパシー〜自分で誰かの靴を履いてみる」に違いない。

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