【越山若水】親類から預かった高校生と中学生の男子がスパゲティを食べたいというので、勇んでカルボナーラを作り始めた。このパスタは卵の火の通し方が微妙。真剣勝負だ▼麺がゆで上がった。さあ卵をトロトロに仕上げよう、と思ったら高校生の方が「あ、それ、いいです」。そう言うとポケットからソースのパックを取り出した▼袋の中身をかければカルボナーラになる。衝撃的な体験だった、とワイナリーオーナーで文筆家の玉村豊男さんが書いている(「食卓は学校である」集英社新書)▼20年以上前の話だから、いまはもっと便利でおいしいものが増えている。コンビニやドラッグストアで、弁当だって何だって手に入る。そもそも料理をする必然性がなくなった▼こんなご時世だから当然、だろうか。2017年度版の食育白書によると、1人で食事を済ます「孤食」が週の半分を超える人が11年の調査より5ポイント上昇し、15・3%を占めた▼1人暮らしのお年寄りはまだ増える。子どもたちの孤食とともに心配されるのが、そんな高齢者だ。孤食は鬱(うつ)の発症を高めるとの研究結果がある▼それとは別に、1人の食事でも鏡に映る自分の姿を見ながら食べると鏡なしよりおいしく感じるとの実験結果もある。では鏡を食卓に…というのは安直すぎる。実験が明らかにしたのは、誰かと食事を共にしてこそ喜べる人の本性だ。

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