2017年10月の台風で傾き、屋根に大きな穴が開いたままになっている文殊山山頂の本堂=5月24日

 2017年10月の台風で半壊した福井県福井市と鯖江市境の文殊山(標高366メートル)山頂にある本堂再建に向け、登山やトレイルランを楽しむ“文殊山ファン”による募金活動が福井市で始まった。「日本百名山」の著者、深田久弥が旧制福井中時代に残した署名があることから、出身地の石川県加賀市でも登山愛好者らが寄付を呼び掛けている。学校や町内会単位で浄財を集めるケースもあり、福井を代表する里山に支援の輪が広がっている。

 ⇒【写真】台風で屋根に大穴が開くなどの被害が出た本堂

 本堂は約13平方メートル。明治初期に再建されたもので140年ほど経過し老朽化が進んでいた。昨年10月、福井県に最接近した台風21号の影響で屋根の後方半分の瓦や板が飛ばされ大きな穴が開いた。本尊など内部にあった貴重品は被害が出た翌日に避難したが、本堂は現在も内部に風雨が吹き込む状態で、入り口のかもいの上にある木材に書かれた深田の署名はビニールで覆い、損傷を防いでいる。

 本堂を管理する楞厳寺(福井市大村町)の徳毛祐彦住職(72)は遅くとも2023年春の北陸新幹線敦賀開業までに再建したい考え。「なんとしても残したい」という深田の署名は取り壊しの際に保存することにしている。一方で数千万円かかるとみられる経費は檀家がいない同寺では工面に苦心しており、麓と本堂近くに募金箱を設置して支援を呼びかけている。

 本堂の惨状を受け、文殊山に親しむ愛好家が動きだした。ランナーが集う市内の飲食店「一期一会」には16日から募金箱が設置された。毎週のように登っているという店主の大竹口信之さん(46)は「本堂の被害には心が痛んだ。多くの人に愛される文殊山のためにできることをしたい」と話す。徳毛さんによると常連の登山者、毎年生徒が登っている福井南高や近くの同市徳光町の町内会からも浄財が寄せられたという。

 

 深田が生まれた石川県加賀市では、現状を知った大聖寺地区の登山愛好者ら4人が「山恋(やまこい)の会」として寄付した。メンバーの山田恵一さん(69)は「寄付者一覧を見るとほとんど福井の方だった。石川でも知人に話すことで、少しでも支援者が増えていけば」と語る。生前の深田と面識がある「深田久弥山の文化館」(同市)の前副館長、荒井喜市さん(70)は、再建について「(深田の)署名がどうなるのか心配。できれば今まで通り本堂内に設置してほしい」と話す。

 支援の輪の広がりに徳毛住職は「文殊山を思ってくれている人が多いことを改めて感じた。本当にありがたい」と感激している。

 福井県越前市のトレイルランナー谷橋洋平さん(37)は「文殊山はイベントで使ったり思い入れのある山。支援したいという多くの人の受け皿になれば」と、募金箱の設置希望者も募っている。

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