【論説】中長期的な日本のエネルギー政策の方向性を示す国の第5次のエネルギー基本計画素案がまとまった。その内容が中途半端だとして原発推進派、反対派の双方から批判が出ている。電源構成比率は第4次を踏襲したにすぎず、各電源の意義を表す文言も上滑りしている感が否めない。これでは、羅針盤としての役割を期待するのは難しい。

 最もやり玉に挙がっているのが電源構成だ。太陽光や風力など再生可能エネルギーを「主力電源」と位置づけ、原発を「重要なベースロード電源」としつつ、原発に関しては「可能な限り低減させる」との一文も付いた。構成比率は再エネ22~24%、原発20~22%、残りが石炭、LNGなど。現行目標からの変更には踏み込まなかった。

 だが、「主力電源」とする再エネや、脱炭素化社会における石炭火力などの目標が、現在と変わらないというのは、どういう判断なのか。再エネを極力増やし、石炭火力などは減らしていくのが筋だろう。不人気政策の原発は、重要なベースロード電源といいながら可能な限り低減させるという表現にも大いに矛盾を感じる。

 裏を返せば「再エネは、そう簡単には進まない。だから原発で」とも読める。こういった裏読みをしなければならないのが“霞が関文学”。官僚が「分かったようで分からない」「結果がどちらにでも取れる」文章に仕上げることを揶揄(やゆ)してそう呼ぶ。原発推進、反対双方を敵に回さないようにしたところ、かえって批判や議論を生む皮肉な結果となった。

 もう一つの注目点だった原発新増設については、一切触れられなかった。経済産業省が、原発論議に最初からふたをしてしまったとしか受け取れない。資源の乏しい日本にとって、原発を含めたエネルギー源の多様化は不可欠な視点のはずだ。

 計画は今夏の最終決定に向けて手直しがあるとしても、福井県の原発の状況に大きな変更を迫るものにはならないだろう。ただ、今後の県内の動向は、エネルギー政策に少なからず影響していくと予想される。来年夏以降、建設から40年を超える古い原発の高浜1、2号機、美浜3号機の再稼働問題が浮上するからだ。原発の電源比率を2割程度とするなら、40年超の原発再稼働が前提となってくるが、県民に根強い不安があることは確か。再稼働のハードルは高く、高浜、大飯両原発の3、4号機の比でないといえる。

 40年超の再稼働ができなければ、基本計画を根本から見直す必要がある。新増設に踏み切るのか、脱原発に進むのか。次の基本計画見直しは3~4年後に行われるが、東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から10年の節目にも当たる。今度こそ、原発議論の回避というわけにはいかず、国のエネルギー政策の大きな分岐点になる。国や電力事業者が逃げの姿勢のままで、原子力政策が前進するはずもない。

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