【論説】アメリカンフットボールの日本大−関西学院大の定期戦で起きた悪質な反則行為の問題は、日大側の対応に関係者の不信が募るばかりだ。けがをした関学大の選手側のみならず、関東学生連盟の各チームが日大との対戦を拒否する方針を示し、日大の選手や保護者会からも批判の声が出始めた。大学日本一の名門校の指導に潜んでいた大きな病理は、日大だけでなくスポーツ全体の信頼を揺るがしている。関学大は26日、日大からの再回答書の内容を「真実とは到底認識できない」と非難した。「行き過ぎた勝利至上主義」に社会が反発している。

 ■選手に前監督が反論■

 問題のプレーは5月6日の定期戦で起きた。日大の宮川泰介選手が、パスを投げ終えた関学大の選手に後ろからタックル、けがを負わせた。その後も危険な反則を重ね退場となった。

 宮川選手は22日、実名で会見し「相手をつぶせと言われ、けがをさせろという指示と解釈した」と明らかにした。「(試合前の)1週間、(監督やコーチに)追い詰められていたので、やらないという選択肢はなかった」とも説明した。

 ところが翌23日、辞任した内田正人前監督が会見し、「私からの指示ではない」と強調した。井上奨前コーチも「思い切り行かせるために、過激なことを言った」と述べ、けがをさせろという指示ではなかったと主張。宮川選手の発言のうち、前監督らの指示に関して重要と思える部分をことごとく否定した。

 ■競技精神を逸脱■

 荒々しく選手がぶつかり合うアメフットは、けがを防ぐためのルールが細かく定められている。例えば攻撃選手のブロックは原則、相手選手の肩から下に限られ、ブロックで手を相手に向けるときは開いていないといけない。頭部への打撃防止、握り拳による打撃被害防止のためだ。反則規定の4分の1以上が、けがを防ぐのが目的。激しさはこの競技の醍醐味(だいごみ)。だが一方で選手の安全へ最大限配慮するのが競技の精神といえる。

 日大アメフット部は、昨年大学日本一に輝いた競技を代表するチームである。そのチームが犯した競技精神を冒とくする行為。問題が拡大しても責任者がなかなか表に出てこなかったことも批判を拡大させた。

 ■勝利至上主義■

 内田前監督は問題の試合後、反則となったプレーに対し「僕のやり方だから。こんなこと言っちゃなんだけど、(反則した選手は)よくやった」などと発言したことも明らかになっている。「(選手には)相当プレッシャーをかけている」「そうじゃなかったら関学みたいなチームに勝てない」といった言葉には、勝つために選手をとことん追い詰めていく勝利至上主義が浮かぶ。25日に日大の大塚吉兵衛学長が会見を開き、一連の騒動は「本学に責任がある」と謝罪したが収束には程遠い。

 関東学生連盟は5月中に臨時理事会を開き、日大の処分を決めるという。日大の部員も宮川選手を守る声明文を出す準備を進めている。関係者が自浄作用を働かせようとする姿が救いだ。

 関学大は26日、「捜査機関による真相究明を希望する」と表明した。調査に乗り出したスポーツ庁は指導力を見せてほしい。選手とともに勝利を目指すという姿勢が感じられず、選手を切り捨てても平気な指導者の傲慢(ごうまん)な姿は、女子レスリングの騒動と同じ構図に映る。日本スポーツ界全体に巣くう病理をこの際一掃する覚悟を見せてほしい。
 

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