【越山若水】フランス語の「マクシム」は17世紀のモラリスト文学者、ラ・ロシュフーコーの著作名が由来とされる。「人間観察を含んだ辛辣(しんらつ)な格言、箴言(しんげん)」という意味になる▼生きる上で教訓としたい魅力的な言葉を仏文学者、鹿島茂さんが収集し解説した一冊が「悪の箴言」(祥伝社)である。そこで次のようなマクシムを見つけた▼「われわれは希望によって約束し、恐怖によって約束を果たす」。鹿島さんによれば、人は約束するとき常に未来をバラ色に見るという。その典型が借金をするとき▼少し倹約すればすぐ返せる―と楽観するが、返済期日が来ても元金さえ返却できない。仕方なく別の借金に手を出す。金額は雪だるま式に増え、揚げ句に矢のような催促。最後は破産の憂き目に遭う▼来月12日に予定されていた史上初の米朝首脳会談。北朝鮮の非核化に世界が注目したが、トランプ米大統領は取りやめると発表した。北の「敵対的な言動」が理由だという▼思えば、年初に急きょ飛び出した金正(キムジョン)恩(ウン)委員長の融和路線。各国の徹底した経済制裁に耐えかねたのだろう。背に腹は代えられぬと交渉を約束した▼北が望むのは、体制保証と段階的な非核化に応じた見返り。有利な展開を求めて揺さぶり作戦に出たが、これが米の怒りを買った。「いつでも解決の用意がある」。恐れをなしたか、再考を促す声が妙に小さい。

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