史料のくずし字を読み進める田原健子さん。奥はこれまでに書き写したノート=福井県文書館

 福井県文書館が2012年度から発刊してきた、幕末福井藩士の人事を記した資料集「福井藩士履歴」の最終第6巻が今春刊行された。陰の立役者が、史料に草書体で記された「くずし字」をボランティアで楷書に書き写した田原健子さん(88)=同県永平寺町=だ。2年半がかりで読み解いた史料は、「福井藩士履歴」関連だけで約2千枚、書き写したノートは54冊にもなる。田原さんは「読みやすいよう常用漢字に書き直した。郷土史に関心がある人に役立ててほしい」と話している。

 田原さんは歴史が好きで40年以上前から古文書を読んでいた。県立図書館が保管する福井藩の史料群「松平文庫」には、読んだことがない古文書が多くあり、ボランティアで書き写しに立候補した。幕末福井藩の上級・中級藩士の氏名や職歴を詳しく記した古文書「剥札(はぎふだ)」「士族」計8冊の“解読”を県文書館から頼まれ、07年夏に始めた。

 最初は字の小ささに驚き「最後まで続けられるのか」と心配になったが、自宅で毎日、史料のカラーコピーを読んで書き写しを続けた。けがで自由に動かない右手の親指にもどかしさを感じながら、読みやすいよう丁寧につづっていった。解読できなかった文字は文書館職員に相談して読み進め、10年1月に完了した。

 田原さんのノートを基に嘱託職員やアルバイトが入力。職員が点検、編集し、「福井藩士履歴」として年1冊ずつ発刊した。柳沢芙美子副館長は「根気と読解の正確さ、書き写された文字の読みやすさ。本当に頭が下がる思い」と話す。

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