【論説】今後5年間の日本の海洋政策指針となる「第3期海洋基本計画」が閣議決定された。同計画は従来、資源開発をはじめとする経済活動の指針だった。今回は、海洋権益を北朝鮮など諸外国の脅威から守る「海洋の安全保障」が、柱として明確に打ち出された。海に囲まれた日本の海洋政策の抜本的な方針転換である。

 日本が対応に迫られるリスクを抱えているのは確かだろう。だが、こうした大きな政策転換を、政府内の議論だけで進めて良いのか疑問がある。同計画は各省庁の予算案編成の基となり、今年12月の防衛大綱改定にも反映される。国会の議論を通じて検証し、政府側はしっかりとした説明を行って、国民の理解を得ることが大事だ。

 2013年4月にまとめられた前回の第2期計画は▽石油・天然ガスの探査▽メタンハイドレートや海底熱水鉱床の商業化▽レアアースの調査―などの資源開発や、洋上風力、波力といった再生可能エネルギー開発が、主要な取り組みとして目立つ構成だった。安全保障にも触れているが、約60ページにわたる計画のうち2ページに満たない。

 対して第3期は、海洋政策の基本方針を記した第1部の2章目を前段と後段に分け、前段は全て安全保障に関する記述に費やした。産業利用や環境維持、国際連携など、それ以外の施策は後段にまとめて記載。安全保障をいかに重視しているかが表れている。

 計画が、安全保障の情勢変化として挙げるのが▽外国公船の領海侵入▽外国漁船の違法操業▽日本を飛び越える、あるいは排他的経済水域(EEZ)への北朝鮮の弾道ミサイル発射―など。北朝鮮の脅威を初めて明記するとともに、名指しを避けながらも中国を念頭に「これまでになく深刻な脅威・リスクにさらされている」とし、「放置すればますます悪化する可能性が高い」と状況を整理した。

 基盤施策には真っ先に、海洋状況把握(MDA)体制確立を掲げた。監視体制強化のため、自衛隊や海上保安庁の艦艇、巡視船艇や航空機、情報収集衛星や沿岸部レーダーなどの効率的運用と増強を行う。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の先進光学衛星など各種衛星の活用も視野に入れ、同盟国と連携も図る。さながら、防衛大綱の海洋版、といった趣である。

 差し迫った脅威があるなら、国民は正しく知る必要がある。ただ、海洋計画策定の根拠である海洋基本法(07年成立)は、その目的を「国際協調の下に海洋の平和的開発を進め、経済社会の発展、国民生活向上を図る」などとうたっている。脅威への対処指針を記すのに最適なものが同計画かどうかは、議論の余地があったのではないか。少なくとも政府は策定経過を改めて説明すべきだ。

 海洋政策は担当相が置かれている重要政策だが、計画改定の節目に、どのような情報発信を行っているのかが見えてこない。政権運営はここでも丁寧さを欠いている。
 

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