【越山若水】世の中のトレンドに印象的な名前を与えると、たちまち一般化し流行を生みだすことがある。そうした言葉をマーケティングの専門家は「社会記号」と呼んでいる▼よく知られたところで「加齢臭」がある。ご存じ、中高年男性特有の体臭である。コラムニストの泉麻人さんが1999年、エチケット商品の話題で披露した▼不快な臭いがその頃、急に漂い始めたわけではない。化粧品会社の資生堂が特異な臭気成分を分析し命名。それを泉さんが新聞コラムで紹介しブームに火がついた▼オヤジ連中が途端に体臭を気にし始めた。消臭用シャンプーやせっけん、下着、靴下など関連商品が販売され、一大マーケットに成長。「加齢臭」が社会記号として認知され、予防意識を高めたからだ▼一方で2000年代の「癒やし」は心に優しいイメージが共感され、生活スタイルまで変えるブームになった(「欲望する『ことば』」嶋浩一郎・松井剛著、集英社新書)▼今年の場合は「キャッシュレス」か。首都圏のコンビニではスマホで決裁する「無人レジ」の実験が始まった。人手不足の業界には願ってもないこと▼キャッシュレス化が進む中国では従業員ゼロの「無人コンビニ」も登場している。ただコンビニは人の触れ合いや安心感を売り物にしてきた。足を運んだ店内に誰もいないとは、あまりに寒々しい買い物である。

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